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2019.09.04

熱狂の中心は世界に、地方に。東京ガールズコレクションが企てる「カオスからの革命」

マイナビpresents TOKYO GIRLS COLLECTION by girlswalker 2019 SPRING/SUMMER


入場開始と同時に、少しでもランウェイ近くの席を確保しようと、観客たちは早朝から並ぶ。

「熱量の大きい人ほど一番前にいける」と村上氏。「閉ざされたものだったファッションショーから、ヒエラルキーをなくしたかったんです。ファッションはみんなのものであるという新しい提案をしたかった。革命という言葉が、文化とか概念を一瞬にして翻すさまをいうのであれば、すごくそれに近い出来事だったんじゃないかなと思います」



カオスの中に革命は起こる

TGCの革命はこれだけに留まらない。日本のガールズカルチャーを世界へ発信する役割を担ったという意味でも、TGCは革命の中心地である。

そもそも大規模なイベントを発足するにあたって、なぜ「F1層」と呼ばれる20代から30代半ばの女性をメインターゲットとしたのか。

立ち上げの2005年当時は、SNSが浸透していなかったため、今ほどガールズ世代のインフルエンス力は大きくなかった。さらに、売り上げを狙う上での購買力は、それほどその層には備わっていないように思える。ビジネスターゲットとしては適していないようにも思えるこの層を、あえて狙いとした理由は何なのか。

村上氏は、「世界の中でも、日本はものすごく特異なんです。いろんなカルチャーが、ひとつのターゲット、たとえばガールズファッションに向けて一斉に吸い込まれていく。僕らはそれをすごく、『カオス』だと思った。蠢(うごめ)きを感じたんです」と話す。

当時はガールズファッション誌の全盛時代。ギャル系からお嬢様系までの細かなカテゴライズごとに看板モデルが立てられ、何誌もの雑誌が発刊され、出版社は売り上げを伸ばすべく激しくしのぎを削りあっていた。つまり、ガールズ世代に向けたマーケットは多種多様のカオス状態だった。

村上氏は、ここに「プラットフォーム的立場をとる存在がない」ことに着目し、ビジネスチャンスを見出した。こうして始まったのがTGCのプロジェクトだった。

ナンバーワンであることの価値

村上氏がTGC発足時にこだわったのは、何よりも「マーケットで一番」のものを作ることだ。なぜなら、ナンバーワンのポジションを獲得することによってはじめて、単なるイベントビジネスでなく「ブランドビジネス」ができるようになるからだ。

「若い女性をもっとも熱狂させるプラットフォームとなり得れば、『東京ガールズコレクション』はブランドになります。IPコンテンツ化することで『ガールズマーケットに熱狂を起こす』ことを目指すさまざまな業態のナンバーワンと組むことができるんです」

TGCは、“TGC”そのものを「ブランド化」し、ガールズカルチャーのプラットフォームとしての確固たるポジションを築くことに成功した。現在、「東京ガールズコレクション×100」の考え方で、さまざまな業態とタッグを組んで多種多様なプロジェクトを展開している。
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文=河村 優

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