ビジネス

2019.09.04 06:30

日米中3都市で描く、ハードウェアスタートアップの勝算とは


住友商事がデジタルトランスフォメーションに大きな商機を見出すのと同様に、HAXも日本市場をデジタルトランスフォメーション需要の溢れる巨大なマーケットとして捉えているようだ。

SOSV創業者・マネージングジェネラルパートナーのショーン・オサリバンはこう話す。

「我々は、ハードウェア特化のアクセラレーターですが、コンシューマー向けハードウェアもさることながら、BtoBのハードウェアこそ大きな可能性を秘めていると感じています。サプライチェーンや生産工程において、ハードウェアを通じてデータを集めそれをいかに活用するかに注目しています。

日本には自動車産業、重化学工業などの伝統的な巨大産業が集積しています。この巨大産業がこれからデジタル化していく中で、BtoBハードウェアの刷新のニーズが次々と生まれてきていますが、これらの伝統産業が自力でデジタル化することは難しい。そこで、スタートアップの持つ技術力が必要です。

海外のスタートアップがそのデジタル化の役割を担ってもいいわけですが、日本は才能あるエンジニアも技術も潤沢で、かつ、同じ国内ですから、大企業の製造現場と距離の近い日本のスタートアップがその刷新を担うのがベスト。ですから私達は今日本に来て、大企業が必要とするような技術力を持つスタートアップの成長を支援しようとしているのです」

そして、従来型のハードウェアのデジタル化に加え、IoT化の潮流の中、ソフトウェア企業もソフトウェア領域のみではもはや完結せず、その活用をさらに広げるべくハードウェア領域にますます目線を広げているという。

より多くのデータを求め、データ採取に適したハードウェアを必要としている。ハードウェアはそのものが体現する価値以上に、ソフトウェアの可能性を拡張する存在として真価を発揮し、新たなビジネスチャンスの拡大にはソフトだけでなくハードの力が必須となってきているようだ。

世界3都市にまたがる独特のプログラム

そもそも、この「HAX Tokyo」の元となっているのは、2012年にSOSVインベストメンツが設立した世界初のハードウェア特化型アクセラレータープログラム「HAX」だ。

このプログラムの特徴は、中国・深センとサンフランシスコの2ステージで構成されている点にある。世界のR&Dセンターである深センにて試作品開発や量産設計を行い、サンフランシスコでは資金調達や市場開拓を行う。これまで、ロボティクスやIoT領域などのハードウェアスタートアップ企業を200社以上支援してきた。
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文=瀧口友里奈

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