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2019.09.03

起業家を育むのに必要な「縦の仲間」と「横の仲間」|慶應義塾大学 國領二郎

慶應義塾常任理事を務める國領二郎教授


次に、「縦の仲間」。

20年間、私も教育者としてその一助になればと思い活動してきましたが、ようやくここ数年になって、名を上げた先輩起業家が後輩を育てる・助ける、というような縦のエコサイクルが回り始めたと感じています。そういった意味で上下のつながりは大切なのですが、これを作り上げるにはとても長い時間が必要です。

このように時間をかけて多種多様な「横」と「縦」の仲間が揃った環境が、起業家としての素養を育てていくんだと思います。だからこそ、僕は卒業していく生徒達に「偉そうなことは言わないから、失業した時はお互い助け合おう」という言葉を贈るようにしているんです。



「30年計画」でベンチャーエコシステムを作る

──SFCから起業家が多数輩出されている背景には、長年かけて培ってきたそのような縦横の繋がりがあるということですね。

「どこのベンチャーに行っても、1人はSFC出身者がいるよね」みたいな話はよく聞きます。それだけ、様々な人材が流動的に市場に行き渡って、かつ「SFC出身の仲間」という繋がりが起業家としての意識を醸成している側面はあると思います。

──ベンチャーに対する理解が未熟だった時代から、20年でそのレベルにまでなってきたということですね。

僕が教員としてSFCに行ったのが2003年だったんですけど、その直前がちょうどネットバブルの時期で、もうとにかく凄かったんですよね。あまりにも大混乱していたので、「何とかしてくれないか」と頼まれたのがSFCに行ったきっかけでした。

あの頃は、せっかく会社を作ったのに悪い人に乗っ取られたとか、基本的なルールが分かってなくてトラブルに巻き込まれた……とかいうのが数え切れないほどあったんですよ。その時代に比べると、今は情報も仲間も揃い始めて、良い時代になってきたのではないかなと思います。

詳しくは後ほどお話ししますが、このベンチャーエコシステム作りを意識し始めたときに、「30年かかる」とスタンフォード大の教授に言われたのですが、それから20年が経ちました。いまはまだ道半ば、これからも波乱があるかと思いますが、根気強く向き合っていきたいですね。

文=小縣拓馬 提供元=Venture Navi powered by ドリームインキュベータ

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