三井不動産は2019年、CVC「31VENTURES Global Innovation Fund 1号」を通して、8社へ出資を行った(7月31日現在)。同社は15年末に、グローバル・ブレインとともに同ファンド(総額50億円)を設立し、アーリー期のスタートアップを中心に投資をしている。さらに、同社は18年5月、同じくグローバル・ブレインと共同で、総額300億円の「31VENTURES-グローバル・ブレイン-グロースI事業」を設立し、1社あたり数十億円単位で、グロース期のスタートアップへ投資する。同ファンド組成は、国内CVC事業では最大級の規模のため、大きな注目を集めた。
「本業の強化や新規ビジネス共創につながる幅広い領域に、機動的に出資できる体制とスタートアップ企業の事業拡大を積極的にサポートする体制があることが強みだ」と話すのは、三井不動産ベンチャー共創事業部長の菅原晶だ。
直近の投資先企業には、世界初の人工意識の実現などを目指すAIスタートアップのアラヤや調理ロボットサービスを提供するコネクテッドロボティクス、歩行者の行動予測プラットフォームを提供する英Humanising Autonomy、日本最大級のハンドメイドマーケットプレイスを運営するクリーマ、商業用不動産情報クラウドプラットフォームの米CrediFi Corpがある。同社の投資領域は、不動産テック、IoT、サイバーセキュリティ、環境およびエネルギー、AIおよびビッグデータ、eコマース、フィンテック、ライフサイエンス、シェアリングエコノミー、ロボティクスと多様だ。これまでも、国内外三十数社に対し出資をしてきている。
こうしたスタートアップ投資の強みになるのが、同社リソースをフル活用する点だ。例えば、同社は19年3月、投資先である、産業向けサイバーセキュリティ対策ソリューションを提供するイスラエル・SCADAfence社の「ビル管理システム向けのサイバーセキュリティ監視システム」導入・検証を実施。首都圏所在の複合施設1棟に試験導入した。
「ビル、住宅、商業施設、リゾート、ホテル、ロジスティクスと多岐にわたる事業領域で、マーケティング、実証実験の場の提供、ビジネスモデルの構築、販路開拓、オフィス、生産拠点、倉庫など不動産ニーズのサポートなど、資金だけでなく、三井不動産ならではのアセット・リソースもスタートアップに提供している」(菅原)