ビジネス

2019.09.02 10:00

テスラCEOとアリババ会長の「珍対談」に聴衆が唖然、中国で

ジャック・マー(Getty Images)

8月29日、上海で開催されたイベント「世界人工知能大会」の壇上で、テスラCEOのイーロン・マスクと、アリババ共同創業者のジャック・マーが公開討論を行った。議論のテーマはAI(人工知能)から宇宙人の存在、人々の労働環境など多岐に及んだが、話はなかなか噛み合わず、マスクの脱線気味の話に聴衆が唖然とする場面もあった。

イーロン・マスクはAIについて独特の例え話を持ち出して、意見を述べた。「AIを賢い人間のようなものと考える人は多いが、実際はそれ以上のものだ。普通の人々とAIとの間の知能レベルの差は、チンパンジーと人間ぐらいの違いがある」

マスクはNeuralink(ニューラリンク)という社名のスタートアップを立ち上げ、人間の脳から直接コンピュータを操作する技術を開発しようとしている。しかし、現在の彼が抱える最大の課題は、研究者たちが自分よりも優れた知能を持つ存在を、具体的にイメージできないことだという。

彼によると、人間とAIの間のコミュニケーションは、クジラ同士の意思疎通と似た面があるのだという。

一方で、ジャック・マーはAIが人間に与える前向きな効果について語った。「AIは人間を脅かすものではない。世間の人々は、いずれそれを理解する」とマーは述べた。

この意見に対しマスクは、「それはどうかな」と納得がいかない様子だった。

今回のイベントは中国国営メディアの中国グローバルテレビジョンネットワーク(CGTN)の主催で行われた。マーは議論の方向を、マスクが力を注ぐ宇宙への旅に切り替えた。

マスクによると、今後の人類にとって大事なのは「意識を保全することだ」という。「意識を当然のものと考えてはならない。人類はまだ宇宙人と出会ったことがないのだ。宇宙人は一体どこにいるんだろう? これはとても重要な問題だ」とマスクは話した。


スペースXの宇宙事業の発表をするイーロン・マスク(Getty Images)

この議論をストリーミングで視聴していた人物の一人は、コメント欄に「誰か、司会者を連れてこい」と書き込んだ。

2人の話はさらに、雇用や教育といったテーマに及んだ。アリババ会長のマーは、AIの普及により労働時間の短縮がもたらされると述べた。彼によると、未来の人類の労働時間は週に12時間になるという。

「今後の10年か20年で、人々は週あたり3日働けば十分になる。1日の労働時間は4時間程度になる」とマーは話した。

この発言は、マーの今年4月のコメントとは大きく異なっている。中国のテック業界では「朝9時から夜9時」「週6日勤務」を意味する「996」と呼ばれる勤務形態が日常化している。

「996労働は問題ではない。好きでもない仕事をやっていたら、働いている時間が全て拷問のように感じるはずだ」と、マーは4月のブログの投稿で述べていた。

編集=上田裕資

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