イーロン・マスクはAIについて独特の例え話を持ち出して、意見を述べた。「AIを賢い人間のようなものと考える人は多いが、実際はそれ以上のものだ。普通の人々とAIとの間の知能レベルの差は、チンパンジーと人間ぐらいの違いがある」
マスクはNeuralink(ニューラリンク)という社名のスタートアップを立ち上げ、人間の脳から直接コンピュータを操作する技術を開発しようとしている。しかし、現在の彼が抱える最大の課題は、研究者たちが自分よりも優れた知能を持つ存在を、具体的にイメージできないことだという。
彼によると、人間とAIの間のコミュニケーションは、クジラ同士の意思疎通と似た面があるのだという。
一方で、ジャック・マーはAIが人間に与える前向きな効果について語った。「AIは人間を脅かすものではない。世間の人々は、いずれそれを理解する」とマーは述べた。
この意見に対しマスクは、「それはどうかな」と納得がいかない様子だった。
今回のイベントは中国国営メディアの中国グローバルテレビジョンネットワーク(CGTN)の主催で行われた。マーは議論の方向を、マスクが力を注ぐ宇宙への旅に切り替えた。
マスクによると、今後の人類にとって大事なのは「意識を保全することだ」という。「意識を当然のものと考えてはならない。人類はまだ宇宙人と出会ったことがないのだ。宇宙人は一体どこにいるんだろう? これはとても重要な問題だ」とマスクは話した。
スペースXの宇宙事業の発表をするイーロン・マスク(Getty Images)
この議論をストリーミングで視聴していた人物の一人は、コメント欄に「誰か、司会者を連れてこい」と書き込んだ。
2人の話はさらに、雇用や教育といったテーマに及んだ。アリババ会長のマーは、AIの普及により労働時間の短縮がもたらされると述べた。彼によると、未来の人類の労働時間は週に12時間になるという。
「今後の10年か20年で、人々は週あたり3日働けば十分になる。1日の労働時間は4時間程度になる」とマーは話した。
この発言は、マーの今年4月のコメントとは大きく異なっている。中国のテック業界では「朝9時から夜9時」「週6日勤務」を意味する「996」と呼ばれる勤務形態が日常化している。
「996労働は問題ではない。好きでもない仕事をやっていたら、働いている時間が全て拷問のように感じるはずだ」と、マーは4月のブログの投稿で述べていた。