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2019.09.04 07:30

不動産から可動産へ──「移動」の進化が切り開く未来

Shutterstock.com

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「不動産から可動産へ」。渋谷を歩いていたらキャンピングカー型のバンに貼ってあったポスターのコピーが目についた。妙にワクワクする言葉だ、と思った。

検索してみると、今流行りのキャンピングカーやモビリティハウスで移動しながら生活するスタイルを謳っているスタートアップがいくつかあることがわかった。世界的な潮流もあるらしく、米国にもモビリティハウスとして会社を立ち上げた企業もあった。


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当たり前だが、建築は動けない。動けないからこそ、躍動感を出すために空間をダイナミックに設計し、光の入り方を工夫し、時間とともに変化するインテリアを生み出し、積極的に人の動きを可視化してきた歴史がある(人によっては全部ガラスで作りたい建築家もいることだろう)。

建築家たちは、あらゆる「動き」を「動かざるもの」に付加する努力をしてきた。そんな建築の歴史に、突然の「可動産」宣言である。いいなぁ、そのカジュアルな宣言。嫌いじゃない、と思った。

「建築家たちの夢」が現実に?

かつて移動式の建築については、1960年〜70年代に活躍した建築家集団のアーキグラムが発表していた歴史がある。

都市が歩く“WALKING CITY”に代表される概念を発表をし、これから未来に起こりうるだろうコンピュータ社会や、地球環境の悪化など、過酷で非人間的な環境に適応しながら生きるための移動する都市をアイロニカルに夢想していた。まさに「建築や都市が移動すること」は建築家たちの夢だったのだ。

しかし、最近はその妄想が実現可能な気もしてきた。そう、世界中の多くの企業がこぞって発表している「自動運転技術」が可能性を開いた。自動運転によって家はストレスなく移動することができる。人間は常に自由に移動しながら生活をする。まさに不動産は可動産になる時代がやってきたのだ。

道路は仕事場になり、社交場になり、駐車場は宿泊施設になり、いや、駐車場に停車する必要も無くなるのかもしれない。道路で走りながら充電できる仕組みを作れば、24時間365日移動しながら人は生きることができる。

もちろん、個々の移動住宅はお互いにコネクテッドな環境になるだろうから、遠隔での会議や飲み会などのコミュニケーションはもちろんのこと、逆に直接会いたいと思ったらお互いの中間地点で!と落ちあえばいい。なんて便利な世の中だろう。

例えば、週末は寝てる間に海辺に到着。朝起きたら、波をチェックし朝からサーフィンを楽しむ。それが終われば、モビリティハウスのシャワーを浴びて、仲間とビールやランチを楽しみながら自動運転で高原へ移動。気づいたら、山あいの涼しいキャンプ場で、焚き火を楽しみながら仲間とワイワイ楽しむなんてことも可能だ。

しかも、移動にまつわるストレスはほとんどなくなるだろう。いつだって人は移動しながら、睡眠時間を削ることなく、体力を温存しながら目的地でのレジャーを享受できるようになる。

さらに話を広げてみる。自動的に移動できるのは住居だけじゃなくて、移動する公民館があったらどうでしょう。移動するマッサージルーム、移動するヨガスタジオ、移動する体育館、移動するフェス会場、移動する学校、移動する町、移動する都市。考えていくと、これは50年以上前にアーキグラムが考えたことではないか。

そう考えれば、実現できそうな気がしてこないだろうか、自動運転技術が発達することで、住居だけでなく町や都市はガラリと変化しそうだ。
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文=奥野圭亮

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