「官民連携」がうまくいかない理由と打開のための3つのヒント

Getty Imagaes


1. 心理的安全性の高いコミュニティ

心理的安全性とは、「メンバーがチームに対して、気兼ねなく発言できる、本来の自分を安心してさらけ出せる、と感じられるような場の状態や雰囲気」をいう言葉で、米グーグルが16年に公表した労働改革プロジェクトの結果で、「心理的安全性をチーム内に担保できるか否かが生産性向上のカギ」と報告されたことから、注目を集めている。

簡単にいえば、「ぶっちゃけ話や本音を話してもOK」な雰囲気づくりである。



そもそも30人は、最初から上下関係やしがらみがない状態で出会う。時にA社の役員とB社の新卒社員が、時に行政職員と議員が対等なテーブルで対話を行う。

それに加え、「ファシリテーション」を通じ、普段の職場では話せない自分個人の思いや本音を発言し共有することで、結果的にいつのまにか「職場よりも楽しい場所」に、そして「30人が同級生・同期生のような不思議な関係性」になっていく。

2. 全ては自らのビジネスチャンスに

同級生のような関係とはいえ、ただ仲の良い馴れ合いのコミュニティが作りたいわけではない。この本音を言える関係性をベースに地域をよくしていく事業を共に創造していくことが大きな狙いである。

そこでメンバーには、「我をもっと出してほしい」「どうしたら自社の利益の最大化になるか考えてほしい」ということを言い続ける。なぜなら、事業を継続的にしていくために必要なのは、下記の図のように「社会的価値」が高く、そして「自社にとって経済的価値」が高い、CSV(共有価値創造)の部分だからである。



企業の得意とするビジネスモデルの考え方を、行政やNPO・市民の方にシェアし、共に持続可能なモデルを作っていくことを目指すのだ。

3. 行政には期待しない

正直、初年度の「渋谷をつなげる30人」プロジェクトは、渋谷区が動かないと何も始まらない企画になってしまう側面があった。その失敗に学び、毎年試行錯誤を繰り返し、現在は「民間でこういうことを街のためにやりたいから、お金は要らないので、オフィシャルに応援はしてください」というスタンスを目標にしている。

また、企業や市民は、独特の行政のロジックを知らないケースが多い。そこで出番になるのが、30人のうち2人の行政メンバーだ。彼らには、地域課題の現状、政策立案や条例制定などに関する知識など、得意分野の情報をシェアし、共に解決できる道筋を考える役割を期待している。

「渋谷をつなげる30人」が当然必ずしもすべてうまくいっているわけではない。しかし、この3点に関しては、特に意識して進行をし、その結果、成功も実感している。クロスセクターによるコラボレーションのベースには「信頼」と「ビジネスマインド」そして、「自分ごと」にしていくことが何よりも重要なのではないかと感じている。

文=加生健太郎

ForbesBrandVoice

人気記事