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2019.08.29 17:00

米百貨店ロード&テイラーが衣料品レンタル企業に売却される理由

Gettyimages

カナダの大手百貨店チェーン、ハドソンズ・ベイ・コーポレーション(HBC)は8月28日、傘下の米百貨店ロード・アンド・テイラーを同国のサブスクリプション型衣料品レンタルサービス、ル・トート(Le Tote)に1億ドル(約106億円)で売却することで合意したと発表した。

HBCはロード・アンド・テイラーと米百貨店サックス・フィフス・アベニューの他、カナダ、欧州でも複数の小売チェーンを運営する。一方のル・トートは、女性向けの衣料品レンタル事業を手掛けるスタートアップだ。非公開企業で、評価額は1億8000万ドル。ロード・アンド・テイラーの事業を取得するため、相当額の資金を調達する必要があるのは間違いないだろう。

サブスクリプション型の企業による百貨店チェーンの取得は、小売業界に反響を巻き起こすとみられる。ル・トートは、新旧の販売形態をどちらも手掛ける初の、そして最大規模の企業の1社となる。

既存の小売業者には今、販売とマーケティングに創造的な方法を取り入れることが必要とされている。そうした中で、新興企業が老舗を買収するケースはこれまでなかった。世間は老舗に注目し、彼らがどのようにスタートアップを吸収していくのだろうかと考えてきた。

高まる「レンタル」のニーズ

女性が衣料品を購入するとき、気にすることはいくつかある。その一つが「リスク」だ。素敵な黒のワンピースにはリスクがほとんどない。それは、繰り返し着られることが分かっているからだ。

大花柄のワンピースなどのように、よりファッション性を意識したようなアイテムは、はるかにリスクが高い。着て行かれる場所が限定され、黒のワンピースほど頻繁に着ることができない。ファッション性の高いアイテムは、顧客を引き付け、店内に足を踏み入れるきっかけにはなるものの、結局は値引き販売することになる場合が多い。

小売業者にとっては現在、値下げと利幅の減少が最も頭の痛い問題の一つとなっている。既存の事業にレンタル・ビジネスが加わることは、現代の小売業が抱える構造的な問題に対応することになる。

意外な「力関係」?

事業規模はロード&テイラーの方が大きいことを考えれば、買収する側とされる側が反対ではないかと思う人もいただろう。だが、最近の小売業界では、資金の流れがこれまでとは逆になっている部分がある。

既存のブランドや小売業者は先行きが疑問視されており、資本を引き付けることができない。一方、ル・トートのように新たな形態でビジネスを行う小売業者は投資家の関心が高く、はるかに資金を調達しやすくなっている。

さらに、既存の小売業者の文化は、彼らが買収を検討するスタートアップの価値を正当に評価することを非常に困難にしている。彼らは常に、スタートアップの企業価値が自社を上回ることはないはずだと考える。そして、大抵はその考えを捨てることができない。

今後も同様の事業の売却が行われることになるだろう。その意味で、今回のHBCとル・トートの合意は重要な意味を持つものだ。この先、吸収されていくのは新興企業ではなく、レガシー企業になるだろう。

編集=木内涼子

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