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2019.09.02

スタートアップがしやすい国。いま注目を集めるカナダの秘密

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今年は、日本とカナダが外交関係設立90年目を迎える。いま、なぜカナダがスタートアップ界隈で高い関心を集めているのか、その理由をカナダ大使館の商務官(イノベーション担当)のロウェナ・コウ氏と烏田朝美氏に聞いてみた。



1. AI界の3人のゴッドファーザー

カナダでは、優れたエンジニアやサイエンティストなど多くのイノベーションを起こす人材が輩出されている。特筆すべきはAI分野で、カナダにはGod Father of AIと呼ばれる3人のカリスマが存在する。

トロントに、ディープラーニングに強いジェフリー・ヒントン氏、モントリオールには機械学習のヨシュア・ベンジオ氏、エドモントンには強化学習のRichard Sutton氏。ヒルトン氏とベンジオ氏は、2018年に「AIのノーベル賞」とも言われるチューリング賞を受賞。受賞者3人うち2人がカナダからだったことからも、この国がAIの世界でトップクラスにあると言えるだろう(もう一人はニューヨーク大学教授でフェイスブックのAIラボ所長でもあるヤン・ルカン博士)。

その門下生たちは、在学中からシリコンバレーのトップ企業にインターンシップに行けるように支援を受けられ、卒業後は、グーグルやフェイスブックなどのAI部門のリーダーとして活躍している。学生の優秀さを表す逸話としては、ビル・ゲイツがマイクロソフトで現役だった頃、数学とコンピューターサイエンスに強いウォータールー大学に人材スカウトに行っていたという話もある。

2. 8つのICT重要拠点

カナダには、大きく分けてICTの重要拠点が8つあり、ほぼ全域でAIの開発が盛んだ。カナダにあるAIに関連する国際企業は、アマゾン、フォード、GM、グーグル、IBM、インテル、マイクロソフト、ウーバーなど。現在、Google Brain AIは、モントリオールで人工知能の工場を稼働させており、トロントではウーバーが無人自動車向け人工知能の開発を行っている。

少し前のカナダの有名企業と言えばBlackBerryだが、BlackBerry QNXはオタワにて、自律走行車の開発に投資している。フォード カナダも、新しい研究施設に最大3億3790万ドルを支出した。

8つの拠点と、それぞれの注力分野は以下の通りだ。

・バンクーバー(アニメーション、仮想通貨、量子コンピューター)
・エドモントン(人工知能、バイオインフォマティックス)
・ウィニペグ(通信技術、サイバーセキュリティ、機械学習)
・ウォータールー(人工知能、ビッグデーター、仮想通貨)
・トロント(人工知能&機械学習、フィンテック)
・オタワ(自律走行車、通信技術、SaaS)
・モントリオール(人工知能、デジタルサウンド)
・ケベックシティ(人工知能、デジタルメディア)
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文=森若 幸次郎 / John Kojiro Moriwaka

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