今回発表されたチップセットはAscend 910と呼ばれるものだ。同社は8月5日に独自開発したオペレーティングシステム「HarmonyOS」をスマートTVや、新たに発表するスマートホーム製品に採用すると発表したが、それから2週間後に独自チップをアナウンスした。
ファーウェイが独自開発したAI技術をチップに盛り込むのは、これが初めてではない。今から約2年前に同社は、ニューラルネットワークのプロセシングユニットNPUを搭載したKirin 970チップを発表し、スマートフォンのMate 10シリーズに機械学習機能を持たせていた。
アップルやクアルコムが、NPUエンジンを自社のチップセットに搭載したのは、ファーウェイから1年遅れだった。
ファーウェイによると、Ascend 910の処理能力はKirinを大幅に上回る「世界最高水準の性能」という。Ascend 910は、近い将来に中国の自動運転車両やスマートシティで採用される見通しという。しかし、米中の貿易摩擦の高まりから考えて、ファーウェイのAIフレームワークが西側諸国で採用される見込みはかなり薄い。
Ascend 910は、米国のクアルコムやエヌビディアなどのエンタープライズ向けの製品と、競合するプロダクトになる。エンタープライズ領域はファーウェイの3大ビジネスの1つであり、残りの2つがモバイルデバイスと通信ネットワーク機器となっている。
しかし、近年はファーウェイのエンタープライズ部門の売上げは減少傾向にあり、2018年の通年売上げに占める割合は約10%に縮小していた。
ファーウェイは米国の商務省により、禁輸措置の対象とされている。ただし、米国はファーウェイに対し新たに90日間の猶予期間を与えており、ファーウェイはこの期間内は、スマホやコンピュータ製造に必要な米国製部品の調達が可能になっている。