7分20秒143。そう、ルノー・メガーヌ RS トロフィーRの7分40秒の記録を破ったのだ。
「リンク&コーは聞いたことがない」と驚く読者が多いと思う。「いったい、どういうことだ」と好奇心が湧いた人もいるだろう。
この話はすればするほど複雑になっていくので、できる限り簡単に説明すると、「リンク&コー」はボルボを買収したことで知られる中国の吉利汽車社(ジーリー)という巨大な自動車グループのいちブランドだ。
スタートアップであるリンク&コーが作る「03」は、ボルボのコンパクト・モジュラー・プラットフォームを採用しながら、リンク&コーが外観スタイリングを担当した。その見た目は全体的にスリークではあるけど、グリルは真っ平らで、少し古く感じる。新車なのに、もうマイナーチェンジが必要ではないかと思えるほどだ。
ところで、このスウェーデンと中国の合作プロジェクトの最重要ポイントは、吉利汽車社のモータースポーツ部門に当たる「シアン・レーシング」だ。すでに同チームは、ヨーロッパを中心に開催されているワールド・ツーリングカー選手権(通称「WTCR」)に参戦する「03シアン・レーシング」のマシンを運営している。
昨年まではポールスターと呼ばれたシアン・レーシングの03号車は、528馬力を叩き出す2Lターボを搭載し、6速シーケンシャルA/Tと組み合わせている。このパワートレーンのおかげで、同車はゼロから100km/hまでの加速タイムが4.4秒で、最高速度は310km/h。
すでに優勝もしている
スウェーデンを拠点にしているシアン・レーシングは、元WTRC選手権の王者だったアンディ・プリア選手を含め、スウェーデンの優秀なドライバーやエンジニアを採用し、優勝を狙っている。いや、実はその優勝の夢はすでに1回叶えているし、3回も表彰台に登っている。
リンク&コーが今までに発表した3台の車種は全車、「03」と同様のプラットフォームを採用している。「01」は中国市場を中心に開発されたクロスオーバーだし、「02」はそれより小型のクロスオーバーになっている。
リンク&コーの車両のベースとなるボルボ車のほうは、2020年までに交通事故のよる死亡者をゼロにするという動きがだんだんと強まり、そのためには、一般車の最高速度を180km/hに制限しようとしている。しかし、そうしたフィロソフィは当然、レースに参戦するシアン・レーシングには関係ない。
ニュルブルクリンクで最速ラップ記録を出すことは、特に欧州でのブランドの宣伝になる。リンク&コーはもちろんそれを知ってるだろう。
そして、同じ方向を見ているチェリー社、ブリリアンス社、グレートウォール社などの中国の自動車メーカーが近い将来、リンク&コーと同様の作戦を立てる可能性は大いにある。中国の進出は始まったばかりだ。
連載:国際モータージャーナリスト、ピーターライオンの連載
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