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イギリスでは、イングランド銀行が2016年からプラスチック(ポリマー)製の紙幣を新たに導入し始め、既存の紙製紙幣は廃止されつつある。イギリス政府は導入に際し、新しいプラスチック紙幣のほうが耐久性と安全性が高いばかりか、リサイクルしやすいことから環境にも優しくなると約束していた。

ところが、政府のそうした主張が、新たな研究によって疑問視されている。独立系フィナンシャル・アドバイザーのエバーグリーン・ファイナンス・ロンドン(Evergreen Finance London)は、イングランド銀行のデータ、ならびに英国小売業協会(BRC)の造幣・紙幣使用に関する情報をもとに、プラスチック製紙幣と紙製紙幣の対照比較を実施した。

その結果、新しいプラスチック製5ポンド紙幣は、二酸化炭素を8.77kg排出することがわかった。この量は、それまで使われていた紙製紙幣のほぼ3倍だ。プラスチック紙幣は耐久性が高いにもかかわらず、寿命までの二酸化炭素の排出量は2.76kg増える。

イングランド銀行は、2016年9月にプラスチック製の5ポンド紙幣を導入し、2017年5月に紙製の5ポンド紙幣を廃止した。また、2017年9月にはプラスチック製の10ポンド紙幣を導入し、紙製を2018年3月に廃止。今後は、プラスチック製の20ポンド紙幣が2020年に、50ポンド紙幣が2021年に導入される予定だ。

今回の研究で、新しいプラスチック製10ポンド紙幣は、二酸化炭素を8.77kg排出することがわかった。それに対し、以前のコットン紙製の紙幣の排出量は2.92kgだった。5ポンド紙幣の排出量は、プラスチック製が4.97kg、紙製が1.8kgだ。

この研究結果は、イングランド銀行の主張と異なっている。同銀行は、新紙幣は温室効果ガスの排出量が少ないと述べてきた。しかし、イングランド銀行によるデータは、いわゆる「機能ユニット」という、紙幣1000枚の10年間における流通高をベースにしている。個人による紙幣使用や、造幣、ならびに実際の紙幣交換回数をもとにしたものではない。

今回の研究では、Apple Payのようなほかの電子決済方式も考察されている。そして、素材がポリ塩化ビニルであるにもかかわらず、クレジットカードが最も環境に優しい決済方法であることが明らかになっている。使用期限が来るまでの3年間で、標準的なカードが排出する二酸化炭素の量はわずか20.8gだった。また、非接触型決済の二酸化炭素排出量は40gだ。

つまり、今回の比較研究では、最も環境に優しい決済方法はクレジットカードかデビットカードだ、という結論になったことになる。世界全体がキャッシュレス決済へと急速に移行していることから、新しいプラスチック製紙幣による影響は、それほど長くは続かないかもしれない。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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