「肩書きは清水文太です」 異彩クリエイターが見せた人間力 #30UNDER30 

清水文太


現在は活動の場を広げ、自由な発想を生かしてクリエイティブな仕事をしている。申し分のないほど充実した仕事環境だろう。そう思ったが、本人は首を振る。「仕事では、あんまり喜びを感じるタイプではないです。好きだからしんどい。熱中しすぎて夜通し作業をすることもしょっちゅうですが、取り組んでいる時は気持ち悪くなっちゃったりする。でもほんの少し理想に近づいたとき、やっぱり苦しいんですけど、楽しいって思う」

表現者としての片鱗を感じたのは、海辺での撮影の時だ。ピンク色のバックペーパーの前で立ったり座ったり、ゆらゆらとさまざまなポーズをとる。すると後ろに回り、ゆっくりとペーパーを破り、手でかき分けるようにして上半身を出したかと思えば、ペーパーを抱きしめるようなポーズをとる。思いのままに体が動いていくのだ。



撮影後、清水は小さくお辞儀した。「ペーパー破っちゃってごめんなさい」。インタビューで話していた「いい子ちゃんじゃない」という言葉を表しているようで可笑しかった。

帰り際、鎌倉駅周辺の商店街を案内してくれた。ミセス向けの服屋や古本屋、古道具屋などに入った。「僕、いつか古着屋さん開きたいなって思うんですよ。こういうところでやったら、若い人も来てくれるかな」

そして将来の話にもなった。「1年後にどれくらいのことができているんだろう?どう変化するんだろう?とは思います」。そんな期待感もあるが、本当の思いはもっとシンプルだ。

ご飯を食べて、布団で寝る。友達と会って遊ぶ。そして、好きな仕事をする。自分の気持ちに嘘偽りなく、自然体でありたいのだ。

自分にとって「何が楽しいか、何が幸せか」。選択の基準は、これに尽きるという。「人を愛せる人、自分を愛せる人になることが一番大事。思いやりを履き違えないようにしたいですね」

清水は、自身の表現について「みんなが理解してくれるとは思っていない」と割り切っている。「いろんな反応があって良い。議論があった方が楽しいですね。だから、僕はこれからも自分らしくいることで、真摯に伝えていこうと思います」。人を見た目や肩書き、年齢だけで判断するのはもったいない。好き嫌いという感覚を乗り越えて、分かり合えるかもしれない。内面から、そう語りかけているようだった。

<受賞者たちへの共通質問>
今後3年で成し遂げたいことは?




しみず・ぶんた◎1997年生まれ。17歳からスタイリストを始める。2019年夏にファッションブランドのアートディレクターを務め、音楽・文筆活動など幅を広げている。ウェブでコラムを連載中。

清水をはじめとした、個性あふれる「30 UNDER 30 JAPAN 2019」の受賞者の一覧はこちらから。若き才能の躍動を見逃すな。

文=督あかり 写真=伊藤圭

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