「肩書きは清水文太です」 異彩クリエイターが見せた人間力 #30UNDER30 

清水文太

「僕はインフルエンサーではありません。強いて言うならば、肩書きは清水文太です。ですが、一般的なインフルエンサーの認識が変わるのであれば出たいと思います」

 日本を代表するビジョンや才能の持ち主30歳未満の30人を選出する「30 UNDER 30 JAPAN 2019」のインフルエンサー部門に選出された清水文太。

17歳からスタイリストのキャリアを始め、音楽制作や文筆など活動の場を拡張し続けている。2019年夏にはファッションブランドのアートディレクターを務め、独自のセンスを発揮している。奇抜なスタイルに目が行きがちだが、どんな内面を持った人なのだろうか。



インフルエンサーという枠に収まりたくない

待ち合わせをしていた鎌倉市内の無人駅に彼はすっと現れた。袖に薄い桃色のフリルがついたシャツに、ポップな柄の水色のタンクトップを身につけ、首からはアクセサリーや「たまごっち」のようなおもちゃなどがぶら下がっている。「こんにちは」。声は思ったよりも小さく、物腰柔らかな印象だ。

ここで対面するまでは、メールのやりとりを重ねてきた。なぜなら最初は、本企画のインフルエンサー部門での受賞を辞退する可能性についても示唆したからだ。「インフルエンサー」という枠に当てはめられると、さまざまなクリエイティブの仕事をしている清水の仕事について伝わりづらいからだという。

編集部で今回掲げた「インフルエンサー」という概念は、単なるフォロワー数の多さや職業としてのそれではなく、「自分の考えやアクションを積極的に発信し、人々の意識や行動に変革を促している人」。これは言葉の発信だけでなく表現活動においても、だ。最終的には冒頭のように受けてくれたのだが、その点、清水はとても慎重だった。背景には、これまでの活動の多様性がある。

17歳でスタイリストのアシスタントとしてのキャリアを歩み始め、18歳で音楽ユニット「水曜日のカンパネラ」のツアーの衣装のスタイリングをきっかけで、注目されるようになった。このほかにも、ウェブマガジンで日常の気づきを綴る文筆活動や、自ら買い付けた古着のポップアップショップの開催などを手がけ、話題になってきた。最近では音楽制作にも注力している。若くして働き始めた清水は、どんな仕事観を持ってきたのだろうか。

「日本は職人気質と言われて肩書きが大切にされてきたと思います。僕についてもスタイリストの印象がある人も多いと思いますが、これまでどんどんやれることに挑戦してきて、その活動は多角的に広がっています。今は体力があるので、やりたいこと全部やってみようと思いますね」

続けて、こう言って笑った。

「強いて言うならば、肩書きは僕です。インフルエンサーという枠で狭まりたくないです。いい子ちゃんじゃないし、我慢はしませんよ」
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文=督あかり 写真=伊藤圭

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