息するように演じる「天性の表現者」女優・石橋静河が目指すもの #30UNDER30


本人はこう語るが、先に述べた通り、デビュー翌年には野田秀樹演出の舞台『逆鱗』に出演し、さらにその翌年には映画に主演して数多くの賞を受賞する。華々しい活躍の裏で、人知れず悩みながら仕事に没頭してきたのだ。

「最近になってやっと気持ちの切り替えがうまくできるようになりました。役になりきって、その気持ちをひきずることが多かったんですが、いまはその役の気持ちを理解して、寄り添いながらも適切な距離で、その人の気持ちを舞台や映像で表現する、そういうことが考えられるようになってきたと感じています」

脚光を浴び、数々の称賛を受けながらも、石橋の根底に変わらずあるのは、「ダンスも演劇もただ好きでやっている」という自らの内から湧き出る、自然な思いだ。

「賞をいただいたことは、『ああ、自分はこの世界にいていいんだ』と思えたというか、安心できた、勇気をもらったということはありますが、現場では何も変わりませんね。日々、一つひとつ学んで成長していきたいと思っています」

「ダンスも演技も、ただ好きなことをやっているだけ」と本人は笑うが、息するように役になりきれる「天性の表現者」なのだろう。今後どうなりたいかと問うと、「精神的に成熟した大人でいたい」と話す。

「これからの人生で、苦しいことやつらいことはたくさんあると思いますが、そういうものに対して無理に抗ったり、逃げたりせずに泰然といられる人間でありたいです。楽しいことも、悲しいことも受け入れて生きていく。難しいことかもしれないけれど、それが本当の意味で豊かな人間で、人生じゃないかって、そう思うんです」

<受賞者たちへの共通質問>
今後3年で成し遂げたいことは?



いしばし・しずか◎1994年東京生まれ。女優。バレエ留学を経てNHK連続テレビ小説『半分、青い』に出演するなど、ドラマや映画、舞台作品で活躍中。

石橋をはじめとした、個性あふれる「30 UNDER 30 JAPAN 2019」の受賞者の一覧はこちら。若き才能の躍動を見逃すな。

文=衣谷 康 写真=隼田大輔

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