2015年に舞台作品でデビューすると、その翌年にはいきなり、松たか子や瑛太ら人気者が名を連ねる野田秀樹演出の舞台『逆鱗』に出演。さらに17年には、池松壮亮とW主演した『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』で、ブルーリボン賞など多くの新人賞を獲得した。
しかし、石橋は最初から「女優」を目指していたわけではない。彼女の表現の原点ともなるクラシックバレエやコンテンポラリーダンスのダンサーとしての未来を夢見ていた。
Forbes JAPANでは、そんな石橋を、「世界を変える30歳未満の30人」を表彰する30 UNDER 30 JAPAN 2019アート部門のひとりとして選出。
彼女はなぜ女優の道を歩き出したのか。「すべてを受け入れる大人でありたい」と望む石橋は、どんな未来を見ているのだろうか。
感情をコントロールできないことがコンプレックスだった
「ほとんど演技をしていないように見えて、しかしリアルな人間像は確実に見る側に伝わってくる。大女優の出現を予感させる」
石橋静河と仕事をしたある人物は、彼女をこう評する。
現代を生きる若い女性特有のあてのない浮遊感。媚びない強さを持った凛とした佇まい。役柄によって表情は大きく変わるが、立ち姿から匂い立つ独自の存在感は、唯一無二の光を放つ。そんな自身のことを、石橋は「感情の起伏が激しい人間」と分析する。
「感情をコントロールできないことが、ずっとコンプレックスでした。でも、お芝居をするようになってからは、『いま私は怒っている』とか『わりと落ち込んでいるな』とか、自分の感情を客観的に受け止められるようになったんです。感情との距離の取り方がわかり始めたことで、役柄の感情も理解しやすくなった。自分の気持ちも、相手の気持ちも、まず受け入れることから始められるようになりました」
そんな彼女が見せる芝居での卓越した表現力は、海外留学まで経験したクラシックバレエ、そしてコンテンポラリーダンスに原点がある。
クラシックバレエは4歳で始めた。踊ること、音楽に合わせて体を動かすことが楽しかった。
「バレエダンサーになりたい」という漠然とした夢は持っていたものの、明確な自覚を持って練習に取り組むまでは至っていなかったという石橋。しかし、13歳のとき、ドイツのハンブルグ・バレエ団の東洋人初のソリストとして知られる服部有吉との出会いが転機となった。