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東京大学名誉教授の上野千鶴子さんは、2019年度の同大学学部入学式の祝辞で、多くの女性が幼い頃から受ける行動の制約を次のように述べている。

「『どうせ女の子だし』『しょせん女の子だから』と水をかけ、足を引っ張ることを、aspirationのcooling down、すなわち、意欲の冷却効果と言います」

石井はそういったジェンダーバイアスに触れることなく、家庭でも学校でも「自分らしくいられた」と振り返る。だからこそ、BLASTには、固定観念にとらわれない多様な生き方の選択肢が表現されているのだ。



「私は異形成です」

動画の中でそう打ち明けた3人の女性の口からは、次々と衝撃的な体験談が出てくる。

「私はきっと死ぬから、子どもを産まなくちゃと思った」
「放っておいたらがんになっていたと言われた」
「彼氏に詳しい知識がなく『性病なの?』と言われ、孤独を感じていた」

赤裸々に語られる言葉には重みがあり、彼女たちの痛みや悲しみ、憤りは、いつの間にか見る人にとって自分のことのようになっていく──。

これは、2019年3月に配信され、瞬く間に話題になったBLASTの動画コンテンツの内容だ。

一人一人が主体性を持つために

特に支持されているのが、性とセックスにまつわる番組「Pillow Talk(ピロートーク)」。セルフプレジャーグッズから生理やピル、女性ならではの性の病気まで踏み込んで発信しているのだが、話題になった動画では子宮頸がんになる前段階の異形成について取り上げた。軽度異形成、中等度異形成、高度異形成という段階を踏んで子宮頚がんに近づいていくため、早期の発見と治療が必要だ。

厚生労働省の2016年調査によると、子宮頸がん検診の受診率は42.4%。「自分はならないだろう」という考えから検診の受診率が半数に満たない中、異形成という言葉に馴染みのない人も多いはずだ。HPVというウイルス感染によって子宮頚部の細胞が異常化する異形成は珍しいものではなく、日本では年間で100人に2人が異形成と診断されている。

認知度の低さから理解されないことも多く、異形成と診断されても口外しない場合がほとんどだ。それを「一人ぼっちで“この世の終わり”みたいな気持ち」と表現する石井自身も、動画で異形成について語る一人である。

「きちんと子宮頸がん検診を受けてほしい」という思いで制作した動画は、SNSで拡散され14万回再生された。さらに、「実は私も異形成です」「きちんと検診を受けようと思いました」というコメントが多数寄せられたという。

「一人一人が自分らしい選択をできるようにすることが、BLASTのミッション。あらゆる問題を、女性に自分事として捉えてほしいんです」

BLASTでは、精子バンクを利用して妊娠・出産する方法や、ポリアモリー(複数恋愛)という生き方についてのインタビュー動画など、多様な家族観や恋愛観についても発信してきた。

女性は自分の体に興味を持つべきだし、どうしたいかを自分で決めていい。そして、多様な選択肢の中から好きな生き方を選んでもいいはずだ。

そんなBLASTの世界観は、女子高生から40代のキャリアウーマン、さらに女性に限らず男性からも支持されている。従来のメディアのように年齢や性別でターゲットを絞るのではなく、“思想で繋がるメディア”なのだ。

文=松尾友喜 写真=小田駿一

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