世界最難関コンクールで最年少優勝した三浦文彰が「楽曲が血に流れるまで演奏する」理由 #30UNDER30

ヴァイオリニスト 三浦文彰

世界の名だたる音楽祭やオーケストラからオファーが絶えない若きヴァイオリニスト三浦文彰。

高校2年生のときにウィーンへ渡り、2009年、世界最難関と言われるハノーファー国際ヴァイオリン・コンクールに初出場。史上最年少でいきなり優勝を果たした。2016年には、NHK大河ドラマ「真田丸」のメインテーマ曲で、印象的なヴァイオリンソロを担当するなど、その活躍は留まるところを知らない。

Forbes JAPANでは、そんな三浦を「世界を変える30歳未満の30人」を表彰する30 UNDER 30 JAPAN 2019アート部門のひとりとして選出した。

「ハノーファーの優勝はターニングポイントではありません。ヴァイオリニストとしてのスタート地点です」と、当然のように語る三浦。16歳で一流音楽家への仲間入りを果たし、世界的に活躍し続ける26歳のいま、彼の音楽人生を辿った。



巨匠たちの演奏する姿に心を射抜かれプロを目指す

「絶対に自分からは『やりたい』とは言っていないはずです」

三浦は笑いながら、ヴァイオリンを始めたきっかけを振り返る。ヴァイオリニストである音楽家の両親の元に生まれ、3 歳のとき、ごく自然にヴァイオリンを弾き始めた。初めて触れたのは、一番小さい16分の1のサイズのヴァイオリンだった。

演奏家としての恵まれた環境からスタートし、「天才少年」「サラブレッド」と世間から騒がれた三浦だが、はじめからヴァイオリン一筋の人生だったわけではない。

「父親も好きだった」という野球の練習で白球を追いながら、小学校の放課後は友達と遊んで、塾に行き、たまにヴァイオリンの練習をする。「普通の男の子」として育った。当時はヴァイオリンでいい演奏ができるとお菓子を買ってもらえたり、褒められたりするのが単純に嬉しかったという。

だが10歳のとき、家で留守番をしていたときに観た、音楽家たちを追った1本のドキュメンタリーDVDが、その後の人生を大きく変える。20世紀を代表する偉大なヴァイオリニストたちの記録映像とインタビューが収められた『The Art of Violin』だった。

「ヴァイオリン界の巨匠オイストラフやハイフェッツたちの演奏を聴いて、心を大きく揺さぶられました。『僕もこうなりたい』と強く感じたんです」

彼らの演奏に少しでも近づきたかった。ヴァイオリンを弾く立ち姿や細かい癖を、夢中で何度も真似た。そして三浦は、プロの音楽家になることを決意する。
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文=田中一成 写真=小田駿一

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30 UNDER 30 2019

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