「ネクスト・ガガ」と称賛されるリナ・サワヤマの素顔 #30UNDER30

リナ・サワヤマ

イギリス育ちの女性アーティスト、リナ・サワヤマをご存知だろうか。耳が早い音楽好きなら、すでに注目している人も多いだろう。

昨年発表した楽曲「Cherry」でジェンダーレスな恋愛感情を歌い、ロンドンから人気に火がついた。自らプロデュースの決定権を握り、奇抜な衣装やメイクでステージ上に立つサワヤマは、英国版VOGUEやi-Dなどファッション誌にも取り上げられ、「ネクスト・レディー・ガガ」として注目されている。

今回、日本を代表するビジョンや才能を持った30歳未満の30人を表彰する「30 UNDER 30 JAPAN 2019」のインフルエンサー部門に選出された。

ステージ上ではエネルギッシュに歌う姿を見せるサワヤマだが、彼女は一体どんな人物なのだろう。オンライン取材で語った思いとは──。



パンセクシュアルの恋愛感情を歌う

「地下鉄を降りていくと、あなたが私のほうを見る。その可愛い視線で見つめてくるの。その日からすベてが変わった」

リナ・サワヤマは2018年に「Cherry」をリリースした際、自身がパンセクシュアル(恋愛対象となる相手の性別やジェンダーを問わない性的指向)であることを公表した。冒頭の歌詞のように、胸の内に秘めていた思いが露わになっていく様子が描かれる。

ミュージックビデオでは、桜をイメージしたヘアースタイルだろうか。ピンク色のショートヘアーのサワヤマが、頭よりひとまわり大きなフェザーの付いた帽子を乗せて、肌着のようにも見える衣装で、繊細ながらも全身全霊を込めて歌う姿に、釘付けになってしまうだろう。



この楽曲はロンドンを中心に熱狂的に支持され、LGBT向けのイベントが行われることでも知られるクラブ「Heaven」でのライブチケットは完売。独自のサウンドと衣装が特徴的で、英日刊紙タイムズに「ネクスト・レディー・ガガ」と評された。

サワヤマは、1990年8月に新潟で生まれてまもなく東京へ。4歳半で親の仕事の関係でイギリスへ渡った。小学生の頃、数年だけ現地の日本人学校に通ったこともあったが、基本的にはロンドンの公立学校に通ったという。

子どもの頃から勉強には困らなかったが、13歳ごろに反抗期になった時期もあった。「成績がすごく落ちて、どっちかと言えばヤンキーのようでした。ロンドンとか都市部だと大人になるのが早いのかな?」と笑いながら振り返る。

公立高校に通っていた17歳の頃、学校にケンブリッジやオックスフォードの大学関係者が来た。そのPRを聞いて、「火が付いて受けようと思った」という。ちょうど両親の離婚裁判が始まり、心理学に興味を持ち始めた頃だった。

当時は、インテリアデザイナーとして独立して働く母と二人暮らし。サワヤマ自身の反抗期は落ち着いてきて、「お母さんが働きながら離婚裁判をしている姿が心理的に大変そう。重そうだな」と感じていた。

一方で、10代から歌手への憧れはあった。13歳の夏に歌手の養成塾に通ったこともあったが、「人の曲を歌わなきゃいけないことを知って、自分が消えるのがすごく嫌でやめました」と明かす。「親が音楽や芸能の業界にいないと、歌手やアーティストになる道なんて誰も教えてくれない」とも話すサワヤマは、17歳ごろから趣味でR&Bのバンドで歌うことはあったが、本気で歌手を目指してはいなかった。
次ページ > リナ・サワヤマが見たい世界

文=督あかり 写真=本人提供

ForbesBrandVoice

人気記事