日本を代表するビジョンや才能を持つ、30歳未満の30人を選出する「30 UNDER 30 JAPAN 2019」のフード部門での受賞を果たした葦苅が、「昆虫食」に着目したきっかけ、そして今後の展望を語った。
「1000匹のコオロギって、実はそんなに飼育面積をとらないんですよ。ワンルームの押入れに入っちゃいます。何回か逃げ出されたこともありますよ」
自分の部屋の押入れで数千匹ものコオロギを飼育していたかつての大学生は、今、カンボジアでコオロギ農家の人たちとともに、食糧生産ネットワークを立ち上げようとしている。
エコロギーの葦苅晟矢が食糧の問題に興味を持ち始めたのは、高校生の時だ。
当時、寮生活を送っていたが、そこで用意されるおかずは美味しいと言えるものではなかったという。葦苅も含めた何百人もいた寮の学生たちは白米だけを食べて、おかずは残飯として捨てていたという。葦苅はその光景を3年間見続ける中で、モヤモヤとした気持ちを募らせていった。
「模擬国連」と恩師との出会い
高校卒業後は早稲田大学へ進学。葦苅が昆虫食に取り組むきっかけは、在学中に所属していた「模擬国連」というインカレサークルでの経験だったという。
模擬国連では、大学生が一国の大使になりきり、国際的な議題について議論、交渉し、決議を採択する。葦苅はそこで食糧問題についてのディスカッションを重ねるうちに、「昆虫食」に興味を持つようになった。
2013年、国連機関であるFAO(国連食糧農業機関)が昆虫食を推奨する報告書を発表。その報告書を読むうちに、昆虫食が世界の食糧問題を解決する「鍵」になると思えてきた。そして次第に昆虫食に惹かれていったという。
しかし、すぐ行動に移したわけではなかった。