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彼が現在のビジネスにたどり着いたのは、大学在学中に履修していたアントレプレナーシップの講座でのこと。ビジネスプランの提出がゴールであるその講義で、経営学のアントレプレナーシップに関する研究者であった恩師に、アイデアの壁打ちを頼んだのだという。

「その恩師は、将来何がしたいのかと、毎週私に問いかけてきました。そこで模擬国連での経験を語ってみたら、昆虫食はビジネスになるというアドバイスをいただきました。それが、今のアイデアに繋がったんです。ちなみにその恩師は私たちの会社『エコロギー』の名付け親でもあります」

アメリカでの衝撃から法人化への道のり

コストを抑えるために始めた自室でのコオロギの飼育や、魚の養殖業を営んでいた生産者へのヒアリングなどの仮説検証を行ううちに、「コオロギの養魚飼料としての活用と食用化」というビジネスプランにたどり着いた。

その新規性と社会性が評価を得た。葦苅は世界最大のリーンスタートアップ式ビジネスプランコンテスト「インターナショナル・ビジネスモデル・コンペティション」の日本大会で優勝。16年には米国シアトルで行われた世界大会に日本代表として出場し、ハーバード大学やスタンフォード大学といった世界トップレベルの学生たちと競い合いながら準々決勝まで進出した。

しかしそこで、世界のトップレベルのビジネスプランを目の当たりして、大きな衝撃を受けたという。

「日本の学生ビジネスコンテストでは、とにかく大きい夢を語れば、ある程度は勝てると思います。しかし、世界大会の出場者たちのビジネスプランは明確なビジョンだけでなく、自らが確立した研究結果と天才的かつ現実的なビジネスモデルの両方が揃っていました。なかにはすでにメーカー企業や国とも取り組みが始めている出場者もいた。レベルの違いを感じさせられました」

葦刈は日本に戻ってきてから、大学卒業の年にコオロギビジネスの実現に奮闘する。

東京都主催のビジネスコンテスト「Tokyo Startup Gateway」で最優秀賞を獲得して得た「信用度」と「資金」で、法人化を決意。その優勝賞金や助成金を元手に、コオロギの研究を行っている研究者などを巻き込みながら、葦刈の会社、エコロギーは歩みだしていくことになる。

コオロギ農家と「コオロギ農協」としてのエコロギー

エコロギーは昨年、活動拠点を都内から東南アジアのカンボジアへと移した。カンボジアにはコオロギを食する文化がある。食用としてコオロギを飼育する、いわゆる「コオロギ農家」まで存在するのだ。

長期の海外での生活経験がなかった葦苅にとって、カンボジアは異国の地。途上国での一人暮らしは苦労の連続だったが、現在ではNGOと提携し、現地の農家ともに分散的な食糧生産ネットワークの構築を目指している。

それは、自社で大規模なコオロギ生産プラントを運営するのではなく、あくまでも個人規模の生産農家と協力して生産することになる。葦刈たちは、なぜそこにこだわるのだろうか。

文=大木一真

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