キャリア・教育

2019.08.30 08:00

日本一人口が少ない村の存続をかけ、20代の「よそ者」が議員を志した理由 #30UNDER30


結局、村民総会の設置は断念されたが、和田の危機感は募るばかりだった。「もし村議会が存続できなければ、もしかしたら大川村も消滅してしまう可能性もある。自分がしたかった楽しい田舎暮らしができているのに、その受け皿がなくなってしまう。大川に移住して頑張っている同世代も増えてきた。せっかく大川が生まれ変わるチャンスなのに、何もしなかったらもったいない」そう和田は決意した。

大川村の議員報酬は月15万5千円。決して高いとは言えないが、選挙への出馬の意向を固めた。後押ししてくれたのは、家族だった。「いずれは地元に帰ってくるだろう」と思っていた両親は、最初は地域おこし協力隊になるのも反対していた。だが、協力隊になった年、両親を大川村に招き、地域の人たちを紹介し、活動について理解してもらった。出馬についても伝えると、応援してくれた。

思い返せば、小さな頃から両親から言われていたのは「人のために生きなさい」という言葉。社会人になって地元の群馬で働き始めた時、「自分のことで精一杯になってしまい、他の人への気遣いをする余裕はなかった。だけど大川に来たら、小さな取り組みでも地域が少しずつ変わっていき、人のためになるような実感ができた」と振り返る。


現場を視察するのも議員の大事な仕事のひとつだ

和田にとって、嬉しい個人的なニュースもあった。地元の祭りの手伝いを通じて出会った女性と結婚し、ことし5月に娘が生まれたのだ。娘には「榛名(はるな)」と名付けた。故郷の榛東村近くの榛名山からだ。上毛三山のひとつで、古くから山岳信仰を受けて来た山で、妻が一緒に帰省した時に登ると、気に入ってくれた。娘には「地域の人に愛されるように。人のことをサポートできるような、懐の大きな人間になってほしい」という願いを込める。

和田はいま、「日本の将来の姿の最先端にいると思う。大川村を存続させ、発展させ、みんなが幸せになるような地域づくりができたら、日本全体に明るいメッセージを与えることができるのでは」と考えている。今後、近い将来、実現したいことは何か、と尋ねると、和田はこう答えた。

「議員としてはスタートしたばかり。もっと勉強して、農業の仕事も軌道に乗せて、村民の人の暮らしにもっと還元していきたいです。そして次の4年後の選挙では、新たな議員の後継者が論点になります。20代の自分が挑戦して、議員になってからどんな充実感があるのかを伝えられることができたら、と思っています。大川村で、一緒に頑張っていけるメンバーを増やしていきたいですね」


わだ・まさゆき◎1990年生まれ。群馬県出身。2014年から緑のふるさと協力隊として大川村へ派遣され、翌年に地域おこし協力隊に。19年4月に村議会で初当選した。

和田をはじめとした、個性あふれる「30 UNDER 30 JAPAN 2019」の受賞者の一覧はこちらから。若き才能の躍動を見逃すな。

文=督あかり 写真=本人提供

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