今回、日本を代表するビジョンや才能を持った30歳未満の30人を表彰する「30 UNDER 30 JAPAN 2019」のポリティクス部門に選出された和田。出身地の群馬県から5年前に大川村に移住した「よそ者」で、地域おこしに関わってきたが、当初は「経験ある人が議員になった方が良い」と思っていた。なぜ村議会の議員になろうと心に決めたのか。
「本当に400人も住んでいるのだろうか」
平成の大合併でずいぶん少なくなった「村」だが、和田の生まれ故郷も、また村だ。群馬県中央部に位置する榛東村(しんとうむら)だ。高校時代まで田畑に囲まれた自然豊かな環境で暮らし、川遊びが好きな少年だった。だが榛東村は、近年はベッドタウン化して人口は約14700人 (7月末現在)と少なくない。一方で、高知県大川村は山に囲まれた地域で人口400人。65歳以上の高齢化率は40%以上と、少子高齢化が進む地域だ。「村でも、環境としては全然違いますね」と和田は語る。
大学時代は東京・八王子市で一人暮らしをしたが、卒業後は「両親に親孝行するためにも、地元で就職するのが良い」と考えて、地元・群馬に戻り、前橋市にある住宅メーカーで営業の仕事を始めた。親からはこう言われていた。「3年間は同じ会社で働いてから、自分の好きなことをしなさい」と。
だが、和田は田舎暮らしへの憧れが抑えきれず、働き始めて1年後に、若者の長期農山村活動プログラム「緑のふるさと協力隊」に応募。そこで派遣されたのが大川村だった。もちろそれまでに行ったこともなく、知り合いもひとりもいない。村役場の職員に最寄り駅まで車で迎えに来てもらい、居住先に向かう途中、不安が募った。
「山の奥深くに行くにつれて、本当にここに400人も住んでいるのだろうか、と思いました」。聞けば、和田が住むことになる集落には20人ほどしか住んでいないという。こうして1年間の活動が始まった。
地域への挨拶回りをするなかで出会った、地域おこしに取り組む60代の夫婦に面倒を見てもらい、徐々に村民たちとのつながりを広げて行った。「社会人を早くしてやめ、なんのスキルも経験もなかった」という和田を、地域の人たちは温かく迎え入れ、交流を深めるうちに「この地域のために役立ちたい」と思うようになる。
「この村の人たちは小さなことでも『ありがとう』と言ってくれる。それが励みになって、もっといろんなことをやってみようと前向きな気持ちを持ち続けられ、自分の成長も実感できたんです」