日本人が知らないアメリカの「ドリームハウス」の条件

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アメリカの住宅事情が劇的に変わろうとしている。

日本の住宅が、駅からの距離や、スーパーマーケットやコンビニなどの近隣の環境、あるいは道路つき(角地であるかなど)などによって、マンションや家の価格が変わってくるように、アメリカにも、住宅価値を決める要素が当然にしてある。その価値基準が変わろうとしているのだ。

アメリカの場合は19世紀の頃から、人々は都市部にそれなりに高い建物を建て、事務所や店舗に近いアパートに住んでいたが、1950年代のアイゼンハワー大統領時代の国策で、国中に高速道路ができ、郊外に画一化された住宅が安価に提供されるようになって、一戸建てに住みたいと夢見るようになった。

そこからは、アメリカンドリームとは、少しでも大きな家に住み、GE社の大きな冷蔵庫やテレビ、洗濯機などを備えることとなった。さらに、この数十年は、核家族化で大きさへのこだわりが後退し、眺望が何よりも大きな要素となっていた。その眺望とは、山林や湖沼のある地区に住むのでない限り、普通はゴルフコースのことを言うのだと断じて、ほぼ間違っていない。

去年だけで200コースが閉鎖

ゴルフコースは整地された緑であり、従って視界がどこまでも開け、さらに池や砂地、グリーンなどのアクセントが加わる。さらに毎日その道のプロによって手入れされるので、美しい緑地が保証されている。人々はゴルフコースに隣接した住宅を「ドリームハウス」と呼び、多額のお金を払い、払い切れない人たちはせめて散歩コースにゴルフコースが見えることを願う。

ところが、ゴルフ人口が長らく減少し続けるアメリカでは、ゴルフコースそのものの維持ができなくなり、破産や売却を通じてコースがどんどん減ってきている。

ウォール・ストリート・ジャーナル (WSJ)によると、2005年にピークであった1万6000コースは、今や1万4000コースに減っている。去年だけでも200ものゴルフコースが閉鎖になった。ゴルフ人口はと言えば、2003年から比べて毎年2桁台の減少率で、ピークに3000万人だったのが、今では2400万人を割り込んでいる。

フロリダのゴルフ開発コンサルタント、ブレイク・プラムリー氏によると、ゴルフ場隣接のドリームハウスは、ゴルフ場がなくなると一挙に平均25%も価値を落とすという。これに、ゴルフ場の後処理を巡って係争が始まると、落下率は40%になるという。つまり、自分の家の価値がいきなり約半分になってしまうのだ。

1年前に、実際に筆者の近所で起こったケースを例にとると、経営のうまくいかなかったゴルフ場が、いつの間にか潤沢に資金を持つ住宅開発のデベロッパーの子会社に売却されていて、いきなりゴルフ場の門が閉ざされた。そして、スプリンクラーを止めたため、芝があっという間に茶色になり、そして水を循環させないため、人工の池は澄んだ青い色から、藻が生えて濃い緑色になり、最後は泥色になった。
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文=長野慶太

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