年金だけで暮らすことは可能か? 米国人の多くが老後を不安視

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現実と乖離した制度

社会保障に完全に、またはほぼ完全に依存している米国の退職者と退職間近の人は、何百万人にも上る(その多くは女性だ)。これまで定年退職は、社会保障と年金、個人の貯蓄という「三脚椅子」に支えられるべきものだといわれてきた。

だが、このモデルはもはや、現実とは合っていない。あるエコノミストは、社会保障によって何とか暮らしている高齢者は、考えられている以上に多いと指摘する。

「退職者のおよそ3割が収入の90%以上を、6割超が収入の50%以上を社会保障制度に頼っている」

社会保障に依存している人たちは、年を追うごとにより多くのことをより少ない金額で賄うことになる。調査によれば、一般的な年金生活者の購買力は、2000年以降34%低下している。

これに大きく影響しているのは、医療費だ。年金給付額は生活費の上昇に合わせて調整されるが、物価以上のスピードで上昇しているメディケアの保険料によって、年金額の増加分は失われている。

つまり、結論はこういうことだ──「ただ生き続けることだけが目標ならば、社会保障だけに頼って生きることは可能だ」。社会保障に生活の大半、または全てを依存している人は、退職後にはより苦しい生活に直面することになる。これは、米国の高年齢の労働者の40%が直面している現実だ。

ただし、この問題については明るい話題もある。米議会は今年7月、およそ50年ぶりに社会保障給付の引き上げの可能性に関する議論を開始した。

編集=木内涼子

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