また特筆すべきなのは、このXooglerコミュニティがグーグルの卒業生だけでなく、現役グーグラーにまで広がっている点だという。参加者のうち2割を現役グーグラーが占めているのだ。
さらに興味深いのは、グーグル本体もこのコミュニティを奨励、バックアップしている点だ。ともすれば、このXooglerコミュニティを通じてスタートアップなど外部に人材が流出する恐れがあるとも考えられるのだが、実際は、「Xooglerのイベントセッションではグーグル本体がスポンサーをしているものも多い。内外の対立構造は一切ない」のだという。
野津はこう続ける。「たとえば、グーグルの社内起業プログラムであるArea120がXooglerに対して、「グーグルに戻ってきて今のアイデアをグーグル内でやらないか」と話を持ちかけたりした例もあります。また、グーグルには、一度会社を辞めて再び戻ってきたような出戻りの社員が多いです。感覚では、2割は出戻りかと思います。2、3度戻ってくるようなケースも珍しくありませんし、そのような人が要職に抜擢されることも多いです」
(左から)The Xoogler.co Community創業者クリス・フォン、Xoogler投資家コミュニティリーダー イート・ウフラムル、野津一樹
GAFAの一角をなすグーグルの競争優位性の源泉は、この卒業生コミュニティを含めたスタートアップエコシステムの真ん中にグーグルが位置していることにあるというのは察するに難くない。
それでは、このコミュニティはどんなカルチャーなのか。野津はその特徴を次のように表す。
「グーグルの性善説に基づいた社風そのままに信頼関係が成り立っているため、知識や人脈などあらゆるものをシェアする文化になっています。見返りを求める「ギブアンドテイク」でも「ペイフォワード」でもなく、「ギブアンドギブ」で価値と信頼のサイクルが回っています。みんな善意のあるやつなのだからフリーライドなんてことはないだろうと考え、惜しげもなく自分が貢献できることをしていくんです。また、世の中を良くするためにテクノロジーを使うというのがXooglerの共通の理念です」
野津は、今年7月にシリコンバレーで新たなファンドを立ち上げたばかりだが、その際にもXooglerの助けがあったと言う。
「ベンチャーキャピタルをやるならこのセッションに出た方が良い、あいつとあいつを紹介する、などとすぐに無条件で力になってくれたんです。コミュニティ全体でそれが自然とできる文化が素晴らしいと思います」
新たなファンドはそんなXooglerコミュニティを活用し、優秀なXooglerに対する投資を中心に、次世代のグーグルに値する企業の創出を目指すという。
「グーグルのようなギブの精神のコミュニティが多くできてくれば、世の中全体ももっと良くなっていくと確信しています。次のグーグルを創る起業家を支援したい」と、野津は新たな挑戦への意気込みを語った。