グーグルの社員たちは〝ex-Googler〟という言葉を縮めて、元グーグル社員のことを「Xoogler=ズーグラー」と呼ぶ。
そして、Xooglerのスタートアップ起業家を支援するために2015年に作られ、6000人以上が所属する団体がThe Xoogler.co Communityだ。
このコミュニティを通じて、Xooglerのスタートアップ起業家は同じXooglerの中から共同創業者を探したり、出資者を探したりすることが可能だ。また、投資家を前に事業計画のプレゼンテーションをするDemo Dayや勉強会など、年間300以上も実施されているイベントに参加できる。
たとえば、Demo Dayには10社ほどのスタートアップが参加し、XooglerでYコンビネーターの元COOであるカサル・ユニスを始めとした、Xooglerの投資家や連続起業家のメンタリングを受ける。これは米国のみならず、英国、シンガポール、インドなど様々な地域で実施されている。
また、専門家を招いて定期的に開催される勉強会では、AIや自動運転などの最新技術のほか、人事や資金調達など、起業家の直面する課題がテーマに取り上げられる。7月には、ウーバーでグロースチームを率いたアンドリュー・チェンを招いてグロースをテーマにした勉強会が行われた。一方的に知識を授ける勉強会ではなく、参加企業それぞれの状況に即したディスカッションが繰り広げられる点が特徴である。
グロースをテーマにした勉強会の様子。(左)元ウーバーのアンドリュー・チェン(右)勉強会の主催者でXoogler ワトソン・ワーリナー
2012年からグーグルジャパンに、そして16年から3年間ほどアメリカ現地のグーグルに在籍したXooglerである野津一樹は、現在このThe Xoogler.co Communityの運営メンバーの一人だ。17年からこのコミュニティに所属して彼らと共に学び、起業家へのアドバイスなども行ってきた。Xooglerの投資家コミュニティのリーダーの一人でもある。
「The Xoogler.co Communityが保有するデータによると、グローバルで見てスタートアップ全体のうちユニコーン企業は約0.3パーセントです。しかし、Xoogler起業家によるスタートアップ全体のうち、3.1パーセントがユニコーンにまで成長している。これは平均のおよそ10倍の確率でXoogler起業家がユニコーン企業を生んでいるということになります」と野津は語る。
インスタグラム共同創業者のケヴィン・シストロム、ピンタレスト共同創業者のベン・シルバーマン、中国のシャオミ共同創業者のリン・ビンなどは、その筆頭と言えるだろう。グーグルがスタートアップ全体のエコシステムに果たす役割の大きさが分かる。