ビジネス

2019.09.01

日本企業と現場の温度差を感じたアムステルダムのLGBTQパレード

アムステルダムの水上パレードに参加した「プライドハウス東京」のボート


水上パレード参加にあたり、アムステルダム市の行政や駐日オランダ大使館などからの支援は、比較的早い段階で得ることができたが、日本国内から賛同や支援を獲得するのには苦労したという。在オランダ日本国大使館の後援は画期的であった一方、オランダにも出店する日本のメジャーなアパレル企業からは、LGBTQ+の支援は「時期尚早」との回答があったそうだ。

アムステルダムのプライド・ウィークは、企業や行政が全面的にサポートしている。警察や消防署、郵便局、またフィリップス、セールスフォースなどといった国内外の主要機関と企業が、ボートを出してパレードに参加。また市内の多くのショップが、レインボー・サインなどで支持を表明している。

企業やショップのこうした支援は、LGBTQ+コミュニティへの理解を広げる大きな力になっていることは確かである一方、マーケティング商戦のひとつの戦術に過ぎないのではないかという批判の声もある。しかし、先述の日本のブランドのように「時期尚早」という判断は、時代の潮流からすると的外れな姿勢であるように思える。

パレード前日に開催された、プライド・ウィークの関係者向けのレセプションでは、活動を推進してきたオランダの国内外の活動家たちが集った。今年のスペシャルゲストとして、アメリカからはLGBTQ+の著名な活動家、ヴィクトリア・クルーズ氏も参加していた。クルーズは、ゲイ解放運動の発端となった、1969年のストーンウォールの反乱に参加していた活動家だ。

多様な職業や背景を持つ人々が、元市庁舎を改装したホテルの中庭に集い、日本では考え難いインクルーシブでリベラルな空気が流れるなか、プライドハウス東京のチームも、こうした活動家たちと交流を深めていた。

「お祭り」から始まる意識改革

アムステルダムのパレードは、老若男女問わず街中が楽しむお祭りだ。今年は80隻のボートが参加し、住民や観光客が運河沿いのボート、路上、建物のテラスや窓から手を振ったり、声をあげたり、踊ったりして参加する光景が見られた。


写真:プライドハウス東京提供

とはいえ、地元住民に言わせれば、パレードに声援をあげているからといって、必ずしも皆が皆リベラルで、LGBTQ+に対して理解があるわけでもないという。それでも、行政、企業、そして街全体がLGBTQ+に関する発信を大々的に行うイベントが、普通に行われる状況があることは、次世代にとっては重要であろう。

多様性を擁護するイベントに、子供たちや若い世代が楽しいイベントとして参加することは、様々な価値観やセクシュアリティーがより「普通」に受け入れられる社会に向けての一歩になるはずだ。

「今回の私たちの船は、420年前にオランダから初めて日本にやってきた船になぞらえて『De Liefde 2020』と名付けられました。オランダからもらった愛(Liefde)をこれからどう活かすか。まずは、ラグビーW杯にあわせ、原宿にオープンする「プライドハウス東京2019」を拠点に、東京から世界へポジティブな情報を発信したい」と松中は締めくくった。

今回のアムステルダムの「お祭り」のような雰囲気が、ラグビーW杯やオリンピックといったスポーツイベントを機に、あまねく伝播することで、日本の組織や個人の価値観がより多様化していくことを期待したい。

連載:旅から読み解く「グローバルビジネスの矛盾と闘争」
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文=MAKI NAKATA

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