「関与しているEU加盟国の中で、冷媒がどこから来たのかや輸入業者が合法な輸入割り当てを持っていたかを確認していた国はない」とカウトザフツ。「市場の約20%が違法な冷媒で占められているため、EU議員らがこの規制を通して得られると考えていた効果が抑制されている」
カウトザフツは、このように密輸された冷媒を使う消費者も安全性のリスクにさらされていると述べた。特殊な検査機器を使用しない限り、製品の品質やその出どころを確実に知ることはできないからだ。こうした違法な製品の一部は、有害だったり燃えやすかったりする。「違法製品が安全ではない方法で市場に流入し、火災が発生した明確な例が存在する」とカウトザフツ。
また、違法輸入はEU企業を犠牲にして外国企業に恩恵をもたらすため、雇用が失われる危険性がある、とカウトザフツは述べた。冷媒はエアコンだけでなく食品小売や自動車、地方自治体の設備などさまざまなセクターで使用されている。気候変動により欧州の夏の気温がますます上がっていることを考慮すると、違法に輸入された冷媒が機能しなくなれば深刻な問題を引き起こしかねない。
「パリを例として考えてみよう」とカウトザフツ。「現在、パリの多くの部分が集中冷却されている。大きな公共施設には大規模な冷却装置があり、周囲の建物に冷たい空気を送っている。違法な冷媒がこの経路に侵入すれば、パリの建物の多くで暑い季節にエアコンが機能しなくなる」
欧州委員会(EC)は、規制の施行に国レベルで問題があることを認識していると述べている。ECは先月、イタリアとルーマニアが違法なFガスへの罰を整備していないことに対して違反手続きを開始した。
しかしカウトザフツは、ECが施行に関する問題をより厳格に取り締まり、不正輸入の流れをより迅速に断たなければならないと論じている。問題解決に寄与する可能性があり、直ちに取れる行動の一つは、税関がFガス割り当てデータベースにアクセスし、積荷が割り当てを満たしているかどうかを迅速に確認できるような電子通知システムを持つことだ。
また国境警備局は、どの冷媒が許可されているか、また大量のガスがどのように、異なる商品コード下や隠れたコンパートメントに入れられEUに密輸され得るかに関してより多くの情報を与えられるべきだ。さらに、違法なFガスを通報するホットラインも設置されなければならない。
ECが罰を科すことができるのは、法律を施行できていないEU加盟国だけだ。そのため、冷却装置の温室効果ガス排出量を増やしている原因である密輸行為を止めることは、各国政府に委ねられることになる。カウトザフツは、最近違法輸入取り締まりへの対応を強化しているポーランドに他国も倣うべきだと語った。