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欧州連合(EU)が2013年、冷媒として使用されるFガス(フッ素化ガス)に新たな規制を設けたとき、この動きは気候変動への画期的勝利として歓迎された。しかし規制が実施された現在、冷媒の違法輸入の増加を受け、Fガス排出量が実は増えているとの新たな兆候がある。

冷蔵庫やエアコンに使用されるFガスは、車や発電所が排出する二酸化炭素の最大1000倍以上の温室効果がある。Fガスが使用され始めたのは1990年代だ。以前使用されていて、オゾン層を破壊していたフロンがモントリオール議定書で禁止されたことでFガスが代用されるようになった。しかし、Fガスはフロンと比べオゾン層には優しいものの、気候変動に恐ろしい影響をもたらすことがすぐに明らかになった。

EUでは、Fガスを対象とした規制が2015年に実施され、昨年厳しい輸入量規定が導入された。この規制は、こうしたガスのうち特に悪いガスの使用を制限し、温室効果が低い新たなガスに切り替えるよう企業に促すためのものだった。

家電業界はこれまで、気候変動への影響が少ない新たなガスへの切り替えに取り組んでいると述べてきたが、市場規制の導入以降、違法輸入されたFガスの闇市場が急速に成長していると警鐘を鳴らしている。同業界によると、密輸入された冷媒は現在EUの冷媒市場の20%ほどを占め、年間最大2000万トンもの二酸化炭素を放出している。これは、自動車約400万台に匹敵する排出量だ。

原因は価格の上昇に

冷媒製造企業のハネウェル・アドバンスト・マテリアルズ(Honeywell Advanced Materials)のジョージ・カウトザフツ社長は「2018年、欧州市場の輸入許可の割り当てが大きく下がった」と述べた。「手に入る供給と需要が一時的に狂った結果、価格が不安定になり急上昇した。違法な市場の参加者は、これがもうかるビジネスチャンスになると考えた」

カウトザフツによると、その結果主に中国製の冷媒に対する需要が急増した。これらは現在、EUの厳格な段階的削減対象となっており、多くの場合違法な使い捨て容器に入れられてトルコやウクライナ、アルバニアなどの隣国から密輸される。これらの冷媒は、国家当局がきちんと検査を実施していないポーランドやルーマニア、チェコ共和国、スロバキアにもたらされ、その後EU市場全体に流通する。

密輸の主な動機は、規制の実施による価格の上昇だ。これは、密輸業者にとってもうかるビジネスなのだ。環境捜査局(EIA)が発表した最近の報告書によると、違法な冷媒の大部分はEUの東側国境を通して密輸されている。

ブリュッセルのEU機関は同地域における法律を通過させるが、その施行はほとんどが各国政府に任せられている。カウトザフツによると、Fガス規制に関し各国政府は税関検査や国境警備の義務を果たしていない。

翻訳・編集=出田静

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