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山梨に帰らねばいけない期限が刻々と迫る。諦めかけていたときだった。 研究所の食事スペースに置いてある、キッチン用のアルミホイルが目に入る。

「メタン生成に必要な金属をアルミホイルに代替できるのではないか?」村木は二酸化炭素と水とアルミホイルの切れ端を混ぜた容れ物を、機械で大きく振ってみた。

「水に大きな衝撃を加えれば、水素原子と酸素原子の結合が切れて、反応しやすい水素が発生するのではないか。それが二酸化炭素の酸素を奪って結合すれば、メタンができるのではないかと閃いたんです」

黙々と機械で振り続けた。するとある瞬間、何の反応もない測定器の画面に、一瞬ピークが現れた。メタンが発生した知らせである。サバティエ反応が発表されてから100年の間、遷移元素と呼ばれる希少な金属の合金などを使わなければメタンは生成できないと言われていた。それがアルミホイルという誰もが手にできる金属を用い、生成に成功したのだ。

「教授と検証中ですが、おそらく世界初の実験結果でした。研究所のみんなと飛んで大喜びしましたね」

加湿器のように全世界の家庭に普及する未来

スイスやアメリカ、アイスランドをはじめとした海外でも、二酸化炭素直接回収技術は研究されている。彼らが設置する巨大な二酸化炭素回収装置の性能は、CARS-αよりも遥かに優れているという。しかし、村木は異なる理想を描く。

「地球温暖化を本当に食い止めるためには、世界中の一人ひとりの意識を変えなければいけません。そのために研究をより身近に感じてもらわなければいけないんです」

だからCARS-αは、現在の形にたどり着いた。ディズニー映画のロボット『ベイマックス』のように愛くるしい存在になるよう、顔と人工知能を搭載して簡単な会話ができるようにした。そして加湿器のように、ボタン一つ押すだけで地球温暖化を食い止めるアクションを起こせる「お手軽マシン」を目指している。

「将来的には、各家庭のCARS-αで取り込んだ二酸化炭素をメタンに変化させて、自家用車のガソリンにしたり、夕飯を作ったり、服を作ったりすることもできるかもしれません」

現在、CARS-αの二酸化炭素の回収率は開発当初の30倍まで引き上げられた。量産化にも取り組み、製造した21台のうち17台を地元・山梨の小中学校や市役所、教育委員会に無償貸与した。人類共通の課題を解決するために、村木は歩みを進める。

「地球温暖化を止めるためにCARS-αを全世界の家庭に普及させたいですね。75億人全員を救うことが僕の夢です」

<受賞者たちへの共通質問>
今後3年で成し遂げたいことは?



むらき・かずみ◎2000年生まれ。東京大学教養学部前期課程理科一類。地球温暖化を止める方法から、人類の第二の居住地としての火星移住・開拓まで一貫して研究を行う機関「CRRA」を立ち上げ機構長を務める。CO2直接空気回収や、空気からの燃料合成などの研究を行っている。

文=田中一成 写真=小田駿一

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