「C&C宣言」から40余年。その予見の通り、社会は工業社会から情報社会へと大きく変革を遂げ、NECは発展してきた。そして再びデジタルの大きなうねりが訪れるなか、NECはこれからの世の中の変化を示しながら新たな変革をもたらしたいと考えている。それが、AIやIoTといったデジタル技術の進展が隅々まで浸透した“Digital Inclusion”社会の実現だ。



1899年7月17日の創業以来、NECは日本と世界のテクノロジーを牽引し続け、時代の節目節目で、社会を変革させるようなイノベーションを生み出してきた。

最も大きなターニングポイントが1977年の「C&C宣言」だ。“コンピューター技術とコミュニケーション技術の融合”を意味する理念として提唱したものであり、当時の会長であった小林宏治は「21世紀のはじめには誰でも、いつでも、どこでも顔を見ながら話ができるようになる」という理想を示した。

その後、電話やインターネットといった通信技術がデジタル化され、パーソナルコンピュータや携帯電話・スマートフォンの普及、そしてデジタル通信網の整備などにより、C&C宣言は現実のものとなった。

その間、NECはコンピューター、通信の一般的普及に寄与するだけでなく、一般企業から政府までさまざまな業種の基幹システムの構築、そして世界の大陸間を結ぶ海底ケーブルの敷設や、小惑星探査機「はやぶさ」の開発などに携わるなど、まさに「海底から宇宙まで」ありとあらゆる社会インフラを支え、「安全」「安心」「効率」「公平」という社会価値を提供している。

10mΦのNECc送信用アンテナ(1964年)

1964年に東京で開催された世界的な総合スポーツ大会を世界で初めて衛星テレビで中継。この成功が、通信技術の歴史に大きな一歩を記した。



C&C宣言(1977年)

アメリカ・アトランタで開催された「インテルコム'77」において、コンピューターと通信の融合をうたった「C&C」の理念を提唱。「C&C」はその後NECの企業スローガンとなった。

C&C宣言(1977年)

アメリカ・アトランタで開催された「インテルコム'77」において、コンピューターと通信の融合をうたった「C&C」の理念を提唱。「C&C」はその後NECの企業スローガンとなった。



PC-9801(1982年)

1982年に発売し、以後約13年にわたりリリースされてきた“PC-9801”。 圧倒的なシェアを誇り、家庭内のパソコンの普及にも貢献した。

金融のデジタル化〜Digital Finance事業を推進

では、Digital Inclusion でなにが変わるのか。

NECのC&C宣言以降、あらゆる業務を「人が処理」する社会から「定型化された人の業務と判断を機械が処理」する社会へと移行した。そして、技術の進展により、「機械が状況を理解し最適化」をする社会になるとNECは捉えている。

人間中心のデジタルテクノロジーが社会に浸透し、世界中のあらゆる人がこれまでとは違った次元の恩恵を受けられるようになるのが、Digital Inclusionな世界だ。これを具現するため取り組む事業の一つが、産業の枠を超えて人・もの・プロセスをつなぎ合わせることで新しい価値を生み出す「NEC Value Chain Innovation」だ。なかでも産業を繋ぎ合わせる血流ともいえる金融の役割は大きく、NECは「Digital Finance」すなわち“デジタルパワーによる金融機能のあらゆる産業や生活への浸透”の推進に注力している。

2019年7月19日にNECが主催した「API Economy Initiative Forum」では、オープンAPI(Application Programing Interface)を活用した産業横断のデジタルイノベーションの推進にむけ、有識者の基調講演や企業の先進的な取り組みが紹介された。NECの講演では、NECの考えるDigital Inclusion、そして事業の一つであるNEC Value Chain Innovationが語られ、Digital Financeの先行事例なども説明された。   

このDigital Financeプロジェクトを推進する「Digital Finance Team」を率いるのは若干30代の若手社員たち。NECのこれから先の100年へと繋がっていくプロジェクトを任された若きリーダー。それが、デジタルインテグレーション本部のディレクターである岩田太地と、マネージャーの渡邊輝広だ。彼らはどんな想いでDigital Financeという事業を推進しているのだろうか。

分断をなくし、公平な社会を目指す

2人とも新卒入社で金融機関向け営業部に配属された。営業を経験した後は金融サービスの新規事業開発をメインに手がけてきた。インドで国民IDを利用し銀行口座取引を可能とするFinancial Inclusionを目的としたデジタルインフラ事業や、三井住友銀行とのFinTech・ジョイントベンチャーによるスマホ支払いサービス「PAYSLE」(ペイスル)の立ち上げのほか、NECが開発した顔認証技術を用いオンライン上で本人確認の申請を完結できるサービス「Digital KYC」(Know Your Customer)のソリューション化などに携わり、さまざまな企業と共創しながら多数の実績を出して新しい社会インフラを築いてきた。

一方で、B to Bがメインの通常業務とは別に、2013年頃からは一般消費者にとって使いやすいサービスについても模索してきた。時には有志により地方で合宿を行い、一般家庭にお金にまつわる話を聞くデザインリサーチや主婦などへのヒアリングを実施。現在もこうした活動は継続しているという。「趣味ですね」と岩田は笑みを見せたが、こうした活動はNECのDNAともいえる“社会価値”と深く関係する。



NECでは「安心」「安全」「効率」「公平」という4つの社会価値を掲げている。「そのなかでも一番NECらしさを表しているのが『公平』だと思います」と岩田は言う。

テクノロジーは、社会が抱える問題の解決策となり得るものだ。たとえば地域経済復活のための人材確保という課題も、テクノロジーを活用して世界のどこにいても働ける環境を実現することで解決できる。

しかし、テクノロジーの活用方法を間違ってしまうと、富裕層と貧困層の格差が大きくなる、いわゆる「分断」が進んでしまう可能性もある。

NECは、その分断をよしとしない。それが「公平」という言葉に込められている。

「現代はテクノロジーの進歩が速いので、人間の理解が追いついていない状態です。さらにテクノロジーが発展していくと、それが自分にどんな影響を与えてくれるのか、理解している人と理解していない人の差が大きくなってしまいます。私たちはそれを防ぎたい。世界のあらゆる人が、学習しなくても自然とテクノロジーの恩恵を受けられるような社会を目指しています」(岩田)



NECでは「安心」「安全」「効率」「公平」という4つの社会価値を掲げている。「そのなかでも一番NECらしさを表しているのが『公平』だと思います」と岩田は言う。

テクノロジーは、社会が抱える問題の解決策となり得るものだ。たとえば地域経済復活のための人材確保という課題も、テクノロジーを活用して世界のどこにいても働ける環境を実現することで解決できる。

しかし、テクノロジーの活用方法を間違ってしまうと、富裕層と貧困層の格差が大きくなる、いわゆる「分断」が進んでしまう可能性もある。

NECは、その分断をよしとしない。それが「公平」という言葉に込められている。

「現代はテクノロジーの進歩が速いので、人間の理解が追いついていない状態です。さらにテクノロジーが発展していくと、それが自分にどんな影響を与えてくれるのか、理解している人と理解していない人の差が大きくなってしまいます。私たちはそれを防ぎたい。世界のあらゆる人が、学習しなくても自然とテクノロジーの恩恵を受けられるような社会を目指しています」(岩田)



NECの持つテクノロジーを、すべての人に公平に使えるようにする。Digital Finance Teamは、それを金融のデジタル化から行っていこうとしているのだ。こうした信念を持つ岩田がDigital Finance Teamを率いる立場となったのは必然と言えるだろう。

岩田はFintech事業開発室の室長も歴任。「会社から指名されたというよりは、やりたいことをやらせてもらっている感じです。やりたいという社員がいればやらせてもらえる。それがNECという会社なのです」(岩田)

そして「NECには高い技術力がありますが、いままでの発想はテクノロジーに寄り過ぎていました。これからは人間がコンピューターにあわせて無理して事務をこなす時代から、創造的活動に専念する時代に変わっていきます。だからこそ『テクノロジーありき』ではなく『人ありき』に考えるべきです。この先の100年に続く変革を起こすためには、継承しアップデートすべきものとすべきでないものをはっきりしなければならないと考えています」と続けた。

「金融のデジタル化」により変わる社会

金融のデジタル化は我々の生活をどう変えてくれるのだろうか。

わかりやすい例として挙げられるのが、個人向けの与信だ。通常、銀行などの金融機関から融資を受けようと思った場合、企業に勤めている人ほどスムーズに与信審査を通過する。個人事業主やフリーランスは、よほど社会的信用がない限り、なかなか与信審査が通らないこともある。

しかし、金融のデジタル化によって、勤務時間、収入、公共料金の支払い状況などのデータを客観的に分析し、個人の信用を可視化することで与信ができるようになれば、今まで融資が難しかった人たちへの融資が可能となる。

真面目で信用されていても、企業に勤めていないために資金調達ができずにチャンスをつかめなかった人が、金融のデジタル化によってチャンスを活かせる可能性が増えるということだ。

そのためにもDigital KYCは重要な技術となる。この技術がさらに進化し、本人が自分のデータをコントロールできるようになり、データ流通にトラストが加われば、金融のデジタル化は一気に加速するだろう。

非金融業界でも金融業務を可能に

Digital KYCの次に、Digital Finance Teamが提供しようと考えているのが「Finance as a Service」だ。これは、金融サービスを提供したい企業が、インターネット上でさまざまなサービス連携とデータ活用を前提としながら、金融業務を行える機能群を提供するサービスだ。

「銀行や保険といったサービスを提供したことがない企業が、それらのサービスを提供できるようにもなるサービスです。その第一弾としてBanking as a Serviceというものを立ち上げつつあります。これを使えば、旅行会社などの非金融業種がバンキング機能を持つことができるようになります。これらの機能はAPIとして提供し、そのマネージメントサービスも含めて我々で提供していきたいと考えています」(岩田)

一方、既存の金融機関においてもこれらのサービスは有効活用できる。金融機関が個人データを分析して、新たな金融サービスを提供するということも可能になる。金融のデジタル化が、これからの日本のビジネスにイノベーションを起こすきっかけとなりうるのだ。

「だからこそ、我々はDigital KYCという非常に地道なところから事業を開始しています。デジタル化が進む社会において、本人確認はとても重要な要素です。その信頼性を高め、しかも簡単に使えるようにするのが非常に重要なのです」(岩田)

予想以上の問い合わせ。そのほとんどが非金融業界から

Digital Finance Teamは、2019年4月から立ち上がったプロジェクトだが、2人は手応えを感じているという。Digital KYCは2019年4月のサービスリリース後、すでに90社以上の企業から問い合わせがあり、連日打ち合わせ続きの状況だ。

このような大きな反響は、予想以上だったようだ。当初は都市銀行や地方銀行からの問い合わせを想定していたが、ふたを開けてみれば、ほとんどが非金融企業からの問い合わせだという。

「もともと金融機関だけではなく、非金融企業にもサービスを提供できたらという思いは持っていましたが、ここまでとは想像していませんでした。Digital KYCに関しては、シェアリングサービスやマッチングサービス提供会社さま、ゲーム会社さまの本人確認のために使いたいという声が多くあります。想像以上にオンライン上での本人確認というニーズが増えているなと感じています」(渡邊)

現在は企業間だけではなく、企業と個人、個人と個人といったオンラインでの取引も増えている。Digital KYCは、オンラインでビジネスを行っているあらゆる企業と人に対して、広く必要とされているテクノロジーであることは確かなようだ。

「こういう方たちも本人確認で悩んでいらっしゃるんだ、こういう企業が金融サービスや決済サービスを検討されているんだというように、Digital KYCのニーズがあらゆるところにあるとわかったのが、このプロジェクトを始めて感じたことです」(岩田)

身近な人に喜んでもらえるサービスを提供していきたい

入社以来、金融サービスに携わってきた2人。それをさらに一歩推し進めて、金融のデジタル化という新しい領域にチャレンジしている現状を、どのように受け止めているのだろうか。

「ニューヨークやロンドンは、金融のための金融を行っています。しかし、日本は産業のための金融という側面が強い。ものを作って売るという産業で生活が豊かになってきた背景があるのですが、このタイミングで金融がデジタル化することで、いろいろな成長の可能性があることをひしひしと感じています。それは、さまざまな企業の方たちだけではなく、我々にも成長の余地があると思っています」(岩田)

一方で渡邊は、一般消費者の目線を忘れてはならないと語る。

「テクノロジーの進化は素晴らしいことです。しかし、テクノロジーありきで便利になる世の中というのは、どうなのかなと思っています。広告業界などでは、インターネットなどから個人のデータを収集してビジネスに活用していますが、それが一般消費者にはわかりません。そこに企業と一般消費者との間に距離感があると感じています。弊社は長い歴史を持つテクノロジーの会社ですが、生活者に寄り添う価値観や倫理観も併せ持っていると思います。私は、自分の家族や周囲の人々に『あのサービスいいよね』と言ってもらえる、そういう喜びを感じられるサービスを開発していきたいと思っています」(渡邊)

巷ではキャッシュレス化が進んでいるが、世の中にはまだまだ現金で支払いを行いたいという人も多くいる。テクノロジーありきで拡大していくキャッシュレスサービスは、一種の「押しつけ」のような印象を受けることもあるという。こうした声も決して置き去りにはしたくないと考えている。

「使っていただける人の考えは大事にしていかないといけない。それはいつも頭にあります」(岩田)

やりがいのある仕事ができる場づくりをしていくのが我々の役目

まだまだ始まったばかりのプロジェクト「Digital Finance Team」だが、すでに2人は手応えを十分に感じている。先人のいない領域で、未開の地を切り開きながら進んでいる2人は、今後どのような活動をしていきたいと考えているのだろうか。

「やりがいのある仕事ができる場を作っていくことですね。やりがいは人それぞれだと思いますし、私も今の新入社員が思うやりがいはどういうものかわかりません。しかし、そこをきちんと聞いて、みんながやりがいを感じられる場を作っていくということは、我々がやっていかなければならないことだと思っています。次の世代のことを考える先輩がいて、やりがいのある場所が継承されていけば、それこそ100年事業ではないですけど、事業の中身が変わっても誰かが変化に対応して続いていくものになると思います」(岩田)

「職場の同僚と一緒に、このサービスを提供していますと、誇りを持って言えるように仕事をしていきたいと思っています。そして結果として、身近な家族をはじめ、みんなが幸せに過ごせる社会になってくれればいいですね」(渡邊)

「金融のデジタル化」の先にあるのは、誰もが幸せになれる世界

NECの目指す「Digital Inclusion」は、すべての人がテクノロジーの恩恵を受けられる社会。そのためには、NECが開発してきたテクノロジーに加え、幅広い業界の協力が不可欠だ。

NECは、デジタルパワーで、金融サービスをあらゆる人と産業への浸透を目指すDigital Financeを通じ、幅広い企業、幅広い技術を提携するための基盤を作っている段階。NECの高度なサイバーセキュリティ技術の上に、さまざまな企業が知恵と技術を持ち寄り、世界を変える新しい社会インフラとサービスを作り上げていく。冒頭に述べた「NEC API Economy Initiative Forum」は、そのための対話の場としても機能していると言える。

「金融のデジタル化」を通じて若きリーダーが見据えるのは、企業だけでなく一般消費者も幸せになる世界。誰もが公平にテクノロジーの恩恵を受けられる、開かれた見通しのよい世界だ。