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いまの農業が抱えるいちばんの課題とは何か。それは「儲かりづらい構造」だ。

日本では、家族経営や従業員が数人の小中規模農家が94%を占める。彼らが、こだわりを持って美味しく安全な農産物をつくったとしても、そうでなかったとしても、見た目さえ整っていて基準を満たしていれば、決まった金額で買い取ってもらえる。JAの買取価格は、形が一緒であれば同じ。どんなに味が薄くても、反対に美味しくできても、形が均一なら値段は変わらない。

つまり、手をかければかけただけ、こだわればこだわっただけ、農家側の負担は増えていく構造。さらに、小中規模農家では大量に生産することができず、機械化など効率化も難しい。買取単価が低いと生活できるだけの収入を得ることも難しいのが現状だ。

「日本産は質が高くて安全、というイメージがあるかもしれませんが、実は世界基準から見るとむしろ低いのが現実。そんな中で、肥料や育て方にこだわって質の高い農産物をつくろうとしてくれている人たちは、日本の未来にとって決して失ってはいけない人たちのはずなんです」

ところが彼らは、儲かっていないどころか、農業一本では生活費すらままならない。食料が少なかった時代には、JAが先導する効率的な流通構造が最適解だったかもしれないが、いまは違う。

消費者が本当に欲している高品質で安全な農産物が供給され、いいものが高く売れるという当たり前の流通構造。それが本来あるべき姿ではないのか──。



農家が儲かるためならなんでもすると決めた。「食べチョク」を立ち上げ、農家の人たちと問題を共有し、向き合う日々が始まった。実際に生産者と消費者を直接結びつけてみて生じた「情報格差」を埋めるために、コンシェルジュサービスも始め、ITを駆使して両者が使いやすいサービスを育ててきた。

「JAが悪いわけではないんです。大規模流通からあふれた部分こそ、食べチョクの出番。どの業界でも、生産規模や需要、生産方針に応じて、適切な卸先を選べるのが当たり前ですが、農業ではJA以外に買取先の選択肢がないのがおかしい。それを変えていきたいんです」

そのために秋元がいま本気で目指しているのは「上場」だ。あくまで一つの通過点に過ぎないが、農業スタートアップとして上場できる規模になることで、少しずつ仕組みを変える力が蓄えられる。プレイヤーは多い方がいい。

「こうしている間にも、廃業を決める農家さんたちがたくさんいる。ゆっくりやっていてはダメだと痛感しています。あと5年くらいで上場できる規模にならなかったら、むしろ私たちの会社って存在している意味がないのではないかと。農業がビジネスとして注目されるためにも、より多くの農家の所得を上げるためにも、上場できる規模への急成長を目指します」

農業こそが一生の仕事──。いまは胸を張ってそう言える。

<受賞者たちへの共通質問>
今後3年で成し遂げたいことは?



あきもと・りな◎1991年神奈川県生まれ。慶応義塾大学理工学部を卒業後、DeNAに入社。2016年にビビッドガーデンを創業し、翌年「食べチョク」をリリース。

秋元をはじめとした、個性あふれる「30 UNDER 30 JAPAN 2019」の受賞者の一覧はこちらから。若き才能の躍動を見逃すな。

文=松崎美和子、ふくだりょうこ 写真=伊藤 圭

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