投資銀行モルガン・スタンレーが先ごろ発表した報告書、「Rise of the SHEconomy(ライズ・オブ・シーコノミー、“彼女”の経済の台頭)」によると、米国では2018年に41%だった働き盛り世代(25~44歳)の女性に占める独身者の割合が、2030年には45%に達するとみられる。
また、独身女性の人口は今後、年平均1.2%のペースで増加。2030年には約7750万人になると見込まれている(全人口はこの間、0.8%のペースで増える見通し)。米国勢調査局のデータによれば、15歳以上の女性に占める独身者の割合は2018年には49%だったが、2030年には既婚者の割合を超えて52%になると予想されている。
こうした変化の背景には、何があるのだろうか──? 女性の初婚年齢が上昇していることや、55歳以上の離婚率が増加していることだけではない。報告書によれば、女性は未婚者の割合が急速に増加している。
旺盛な購買意欲
衣料品や外食、パーソナルケア製品のカテゴリーにおける独身女性の支出額は、全世帯の1人当たり平均支出額を上回っている。小売業者が独身女性を潜在的なスイート・スポットと見るのはそのためだ。
報告書は、女性の就労率の上昇と賃金格差の是正により、単身世帯と2人以上世帯の女性の支出の差は今後、さらに拡大していくと予測している。
女性向けの販売を強化しているナイキや、すでに売上高に対する女性客の貢献度が70%程度となっているルルレモンなどのブランドは特に、こうした傾向から特に恩恵を受けるとみられる。男性も含め、独身者は既婚者より運動に費やす時間が長く、スポーツウェアや関連製品の需要を押し上げると予想されている。
また、TJXやロス・ストアーズなどのオフプライスの小売店は、顧客の6割以上を女性が占めている。そのうち独身女性は、既婚者よりも収入が少ない一方、靴や洋服に対する購入意欲がより高い。さらに、こうした店舗の特徴である有名ブランドの商品が値引き価格で買えることや、「宝探し」のような買い物体験ができることを好む。
外食分野で大きな利益を得ることになるとみられるのは、すでに顧客の半分以上を女性が占めているメキシコ料理チェーンのチポトレ、そしてコーヒーチェーン大手のスターバックスだ。
独身女性のパーソナルケア製品向けの支出額は、平均2.58人で構成されるその他の世帯の支出額とほぼ同額だ。この分野では、ビジネスの75%以上を女性に依存するセフォラ、アルタビューティー、エスティローダーなどが、特に大きな利益を得ると見込まれる。
Z世代は、年上の世代が若かったころに比べて化粧品などへの支出額が多い。彼らが働き盛りの年齢に近づいていることから、美容製品は今後、需要が最も大幅に増加するカテゴリーの一つになると予想されている。