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2019.08.26

ヒルズの未来形が明らかに──東京は国際都市の覇者になれるのか、森ビルの狙い

虎ノ門・麻布台地区に新たに建設される予定の超高層ビル


同地域は、東西に長く、高台と谷地が入り組んだ高低差の大きい地形で、小規模な木造住宅やビルが密集していた地域だ。また、桜田通り、外苑東通り、麻布通りに囲まれ、東西を貫く道路が少なく、交通網が分断されていた点も課題だった。今でこそ港区はセレブな街や高層ビルが建ち並ぶ大都心といったイメージだが、いまでもひとつ裏通りへ行けば、民家が建ち並んでいる。

計画は、30年前の1989年に街づくり協議会が結成されるまで遡る。30年の間に、約300人の権利者と粘り強く議論を重ねた末、合意に至った。六本木ヒルズ建設の際も400人以上の地権者と話し合った結果、建設に至った経緯がある。


開発エリア空撮(着工直前の2019年7月6日撮影)

六本木ヒルズも道路や交差点の課題があったが、森ビルが再開発に関わることでインフラが整備されたと指摘されている。同様に今回のプロジェクトでも、課題となっている敷地内の道路など分断された交通網の整備を進めていくという。

都市間競争で勝ち抜くために

今回のプロジェクトは、港区を戦略エリアと位置づける森ビルにとって”要”となる。隣接するアークヒルズ、グローバルビジネスセンター・虎ノ門ヒルズ、六本木ヒルズをつなぎ新たな文化、経済圏を創出するのが狙いだ。

また辻は「都市間競争の時代になった。シンガポール、香港、上海、ニューヨーク、ロンドンなどの都市とどう競争し、東京が勝ち抜いていくかが重要であるという認識だ」と語った。

そのために国際水準のオフィスの他に「Green」「Wellness」などの付加価値を整備することで、世界中から「ヒト、モノ、カネ」を集める磁力となる街づくりをし、東京の都市としての総合力が上がっていくと考えているという。



つまり、国際的な都市間の競争に勝ち、いかに外資系企業やその社員を誘致するかが鍵となる。ただし、そこには辻の言うような多様性があるかは疑わしい。似たようなバックボーンを持つ、いわゆるグローバルエリートが集まるだけだからだ。

昨今、東京では都心回帰の動きが活発化している。港区の人口増加率は2010年から15年の間、千代田区に次いで2位、特に高所得者層の増加が顕著だ。

「虎ノ門・麻布台プロジェクト」は、その勢いに拍車をかけるのか。2023年以降の動向に注視したい。

文=本多カツヒロ 写真=森ビル提供

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