26歳で「史上最年少の副市長」に アジャイル型で変革するつくば市経営 #30UNDER30

つくば市副市長 毛塚幹人


「市長がCEOなら、副市長はCOO」

しかし、その道のりは決して簡単ではなかった。毛塚はトップレイヤーで意思決定をする仕事をする一方で、旧来型のコミュニケーションも欠かさない。

「職員数は1900人。組織内での人間関係を作るためにも、1対1で飲みに行くことも多くあります。いざ物事を実現して行く上では、ウエットな信頼関係が大切です」

市長がCEOなら、副市長はCOO(最高執行責任者)と解く。「26歳でこの役職に就いて、自分自身が常に成長を続けていないと業務内容に見合わないという感覚を持っています。それぞれの役職でプロフェッショナルな方たちがいるなかで、全体を理解して、批評的に物事を捉える自分も知識を身につけなくてはいけない。それは政策面に留まらず、地域の実態を知るためにも数字上だけではだめ。地域を細かく歩きながら理解しないといけない面もあると思っています」

そんな毛塚が、U30の若者として、つくば市の行政を変革するのに必要なのは、「非連続性」だと考えている。

「つくば市自体、国家プロジェクトの研究都市として誕生しました。連続的な発想をしていては、物事は大きく動きません。現在であれば、つくば市を『衰退して行く地方都市』と捉えるのではなく、『世界の研究都市』と競う存在であることを意識しなくてはなりません。これまでは『アジア最大の研究都市』という位置付けでしたが、アジア各国でも研究都市が整備されていく中で、行政のサポートや生活環境も含めて魅力的でないと世界で活躍する人々を確保できないと考えています。そういった視座で都市経営をしなければ、独自性を発揮できません」

高校時代、「日本の科学を守る」ために、研究者ではなく、国の中枢で働くという選択肢をした彼のスタンスと今は変わらない。つくば市という地方から、有益な先行事例を作るべく奔走している。いま彼が目指しているのは、「つくば市の再編集」なのだ。

「同世代のみなさんには、行政や農業、漁業などの現場は堅いと思われているかもしれません。ですが、そういうところこそ、イノベーションの余地と魅力があり、ブレイクスルーのポイントがあるのです。そして自分たちの強みを意識し、自分らしさを加えながら、多くの仲間とともに社会を変えていきたいですね。悲観はしていません。10年後がますます楽しみです」

<受賞者たちへの共通質問>

今後3年で成し遂げたいことは?




けづか・みきと◎1991年生まれ。東京大学法学部卒業後、2013年4月に財務省入省。17年3月退職。同年4月につくば市副市長に就任。

文=冨手公嘉 写真=小田駿一

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