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「実は大学時代、以前から憧れのあったつくば市の行政について調べていたんです」という毛塚。つくば市には国の研究機関の約3割が集結し、民間を合わせて約19000人の研究者が働いている。そこで、社会起業家として障害のある人たちを雇用して野菜を作る農場「ごきげんファーム」の経営を経て、市議会議員となった五十嵐に、注目したのだ。

「それまでになかったやり方で、小さな動きからいかにソーシャルインパクトをもたらしていくのか、小さなチームからいかにプロジェクトをスケールしていくかの戦略を語られていて。いい意味で『市議会議員らしからぬ考え方』をされてるように思えた。スタートアップのような発想で、新鮮でした。学生ながらに生意気にも『とても珍しいスタンスで政治に取り組まれている』と思い、メールを送ったら会ってくれたのです。それから、住み込みで市長選挙戦のお手伝いをした縁がありました」

毛塚が支援した五十嵐は、当時の2012年市長選では次点で落選するも、16年の選挙戦で晴れて市長になった。また毛塚も国家の仕事を通じて「今なら、学生時代とは違ったステージで戦える」と感じていたタイミングだった。



つくば市から先行事例を

毛塚が副市長となって真っ先に取り組んだのが、変革に柔軟に対応する「アジャイル型」の組織改革だ。業務の自動化を進め、市民税にまつわる業務などを効率化した。

「アジャイルというIT用語を知ったのは、中学生の時。地元の栃木に大手電機メーカーの社員が多く住んでおり、アジャイル型開発に取り組み始めていた友人の父親から教えてもらいました。プロジェクトをやる時に小さく検証を繰り返す動きは、その時から意識するようになって。行政は効率性よりも正しさが求められる世界で、動きが遅いこともある。一方で制度を変えていく力、ポリティカルに動いていく力も持っています。その時にスタートアップだけではできないことをできる可能性があり、双方のいい部分を連携させることができれば、改革が前進すると考えました」

2018年4月にはつくば市で生み出される研究成果の産業化を促進するため、スタートアップ推進室を創設。同年には、ガバメントクラウドファンディングを実施して予算を獲得し、積極的に官民のアイデアを集結させてきた。さらに、税収に頼らず新規事業を促進するため、クラウドファンディングなどで税収外の資金調達を行う人材を、行政で初めて、ファンドレイザーとして募集した。

一方で、「つくばイノベーションスイッチ」や「つくば市未来共創プロジェクト」などの枠組みを新たに整備し、限られた予算内で資金提供できない場合にも、行政が調整役を担い、研究者や民間事業者の自由なアイデアを元にした共同研究や実証実験を支援する仕組みを作った。初の実績を作ることは、無償であっても、行政と民間、両者にとってメリットとなる。

文=冨手公嘉 写真=小田駿一

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