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ブロックチェーンに限らず、途上国支援の現場はテクノロジーを活用した課題解決が流行っている。だが、テクノロジーがあるというだけでは何の解決にもならない。技術を使えるようになるための法整備や、環境を整えることが何よりも大切であることを知る彼女は、自分の仕事を「糊」に例える。

「私はいろんな人をつなぐ糊みたいな存在。特に海外のエンジニアは社会に役に立ちたいという意識が強いけど、現場で粘り強く交渉することは苦手です。逆に現場のスタッフは、交渉はできるけどパワポで資料を作ることだったり、テクノロジーのポテンシャルを評価することは苦手だったりする。私は現場も入れるし、エンジニアの話もわかる」

そんな彼女のキャリアについて、どうしても聞いておきたいことがあった。2017年8月にアクセンチュアに正社員として新卒入社し、いまはマイクロソフトでエンジニアリングと最先端の技術に触れながら働いている。NGO活動も続けながらの日本での就職だった。大手企業に行かずに、現場で働き続けることもできたのではないか。あるいは、テック系のスタートアップという選択肢もあったのではないか。

「学生時代に関わった国際機関、そしてNGOの現場で学びました。大手企業は敵ではなくてむしろパートナーなんです。結局のところ、最大の社会貢献はお金を出すことだという現実があります。お金がすべてではないけど、お金があるから動くことがある。大手が手がけるプロジェクトで雇用も生まれます。これってすごい支援じゃないですか。加えてアクセンチュアでは資料の作成の仕方、クライアントに響くプレゼンの仕方など実務的なスキルを学びました。また、大手企業の幹部や多くの技術者に会えることが魅力です。お金や雇用といった強みを活かすためにも大手企業で働きながら、スタートアップや現場を繋ぎたいのです」

安田は、新しいキャリアの形を日本で切り拓きたいのだ、と語気を強める。社会貢献か、就職かではなく、どちらも両立させることが新しいのだ、と。ビジネススキルが足りないばかりに、アピールに失敗しているNGOやスタートアップは少なくないと彼女は考えている。

「NGOの活動にもっと時間を割いたり、自分で起業をして食べていけるのが、私の理想ではあります。でも、もう少し修行したいんです。会社員との両立は大変ではあるけど、両方を経験しているから見えてくることもたくさんある。IBOの尊敬しているボスは長年、弁護士として活躍してきた人です。企業で働きながら、NGOもやりたいという同年代も実は結構います。私が自分で結果を出して、背中をみせることで、後に続く人が出てきてほしいって思います」

描く未来は派手じゃない

なぜ、あえて茨の道を選ぶのか。彼女はカラッとこう言う。

「パッションですよね。できないって思わないんですよ。やりたいからやるしかない」

どこまでも軽やかにグローバル社会を渡り歩き、ビジネスと社会貢献、現場とテクノロジーの間で、バランス感覚を保ちながら、安田は持ち前のバイタリティーで自分の道を突き進む。そんな彼女の完成形は本人も含めて、誰にも見えていない。次のステップはいったいどこなのか。選択肢は広がっているが、まず大事にしたいのは目の前のプロジェクトだと語る。

「デジタル・アイデンティティーの問題にはこだわりたいです。バングラデシュでやりたいことはたくさんある。難民の人たちが、自分が誰なのかを証明して仕事ができるように。描いている未来像はそこまで派手じゃないですよ」

<受賞者たちへの共通質問>
今後3年で成し遂げたいことは?




やすだ・くりすちーな◎1995年生まれ。パリ政治学院卒業。2016年に米NGO「InternetBar.org」ディレクターに就任し、デジタル・アイデンティティ事業を担当。17年にアクセンチュアの戦略コンサルティング本部に新卒入社。19年にマイクロソフト・コーポレーションに入社しCloud Developer AdvocatesのProgram Managerに就任。現在も同NGOでの活動を続けている。

文=石戸諭 写真=伊藤圭

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