今回の旅を通じて、日本とフィンランドとの共通点や違いに着目し、私たちが学べるヒントを探った。5回に分けてエッセー形式で紹介する。
3回目の舞台は、ヘルシンキでいま注目のスポット、新しい図書館オーディ(Oodi)だ。
「天国」のような図書館
緩やかに曲線を帯びた屋根に、広々とした建物。上部のガラス張りと対照的な下部の木材は絶妙にマッチしている。外観だけ見れば、大きなホールかミュージアムといったところだろうか。階層の境界線が曖昧で、外からは何階建てかも分かりづらく、青空の下で建物が波打つようだ。
ここは、ヘルシンキ中央図書館「オーディ」。フィンランド国会議事堂の真向かいに位置する。
オーディのエントランスに入っても、すぐには本棚が見当たらない。そこには、借りた本を返却する場所や、モダンなカフェレストランやギャラリースペースがある。
3階に上がると、外から見えた天井とガラス張りの空間に、やっと図書館らしい姿が現れる。
オーディのパンフレットに、この3階について「Oodi is a heaven for book lovers」や「Book Heaven」と記されている通り、外の光を柔らかに感じられて木の温もりが心地良い。まさに「天国(heaven)」だ。
オーディは、フィンランドの101回目の独立記念日の前日、2018年12月にオープンした。蔵書は10万冊と比較的少ないが、オンラインサービスと図書仕分けロボットを活用し、ヘルシンキ首都圏エリア全ての約340万ものアイテムが利用できる。
膨大な蔵書を抱えるということを優先順位から外すことで、図書館に新たな命を吹き込んでいるのだ。
3階にある図書館スペース。曲線を帯びた天井が特徴的だ
スペースに余裕があるため、図書館にはリビングルームのような空間が広がり、親子連れの姿も多く見られた。フロアをぐるりと一周してみると、ガラス窓の近くにある緩やかな傾斜で、2歳児くらいの男の子がキャッキャと笑いながら走ってきた。父親は注意するわけでもなく、にこやかに見守っていたのが印象的だった。
リビングルームのような空間も(筆者撮影)
初夏のよく晴れた日だったから、テラスは満席。図書館内にある店で買ったコーヒーやパンを片手におしゃべりしたり、パソコンで仕事をしたりしている。おそらく、図書館に用事があったというより、日常を楽しむためにここまで足を運んだのだろう。
テラス席では太陽の光を浴びながらおしゃべりする人の姿が見られた