進化するヘルシンキの図書館が「天国」と言われる理由|フィンランド幸せ哲学 vol.3

ヘルシンキ中央図書館「オーディ」


何かを生み出し、古いものは修理する

1階と3階の「天国」のような図書館を先に紹介したが、私が最も驚いたのはクリエイティブな2階だ。

まず、フロアの中央付近で女性たちがミシンで服を縫っている姿には目を見張った。このほかにも、イメージしたものを立体にする小型の3Dプリンター、大きめなポスターなどを印刷する大判プリンターなどもあり、材料費だけ自己負担すれば、機材は自由に使えるのだ。


自由にミシンを使い、服などを縫う女性たち

3Dプリンターの使い方やTシャツの縫い方を学ぶワークショップも開かれるという。

しかもこのフロアは、何か新しいものをつくるだけでなく、「古いものを修理する」という狙いもあると聞き、日本の物を大事にしようとする「もったいない精神」との共通点を感じた。

ちなみに余談だが、ネットフリックスを通じて米国でも一大ブームを巻き起こした「こんまり」こと近藤麻理恵さんは、フィンランドでも広く知られ、図書館にも近藤さんの著書のフィンランド語版「KonMari」が置いてあった。現地ガイドによると、掃除をして部屋を綺麗にすることを「コンマリッタ」と言うとか。


3Dプリンターで試作する人たち


大判プリンターもあり、ポスター紙などの費用のみ払えば使える(筆者撮影)

クリエイティブとはいえ、手を動かして形あるものをつくる場所だけではなかった。

ある小さな窓を覗くと、ドラムやシンセサイザーが置いてある防音スタジオになっており、男性が何か音楽をレコーディングしているようだった。このミュージックルームでは、バンドメンバーが集まって練習したり、一人でこもって音楽をゼロから創作したりすることだってできるのだ。

公共施設にスタジオがあるのは、夢のようだった。大学時代に趣味でバンドを組んでいたが、もしこんなスタジオがあったら、ライブに向けてわざわざ学生でも借りられる安いスタジオを探して、時間に追われて練習する必要もなかっただろう。しかも収録や創作もできるとなれば、果たすことができなかったオリジナルソングづくりにも本腰を入れて取り組んでいたかもしれない。


窓越しに音楽をレコーディングする後ろ姿が見えた(筆者撮影)

このほかにも、いくつかの会議室で議論をする市民の姿や、自習室で勉強や仕事をする姿も見られた。一方で、子供達がVRの装置を目に付け、最新のゲームで大はしゃぎするゲームルームもあり、小さな子供から大人まで、オーディは多様な要望に応える夢の複合施設となっていた。

なぜこのような魅力ある図書館が生まれたのか。ヘルシンキ市の担当者に話を聞いた。
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文=督あかり 写真=Aleksi Poutala

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