ビジネス

2019.08.27

トレンドでは終わらない。D2Cが示す新たなブランドビジネスの形

MEDULLA(メデュラ)


ストーリーを伝えられるのも“デジタル”あってこそ

TO NINEで「デジタル × ブランディング」をテーマに数多くのD2C支援をおこなう取締役の吉岡芳明は、「SNSの普及によって、商品の背景にある『なぜ』を伝えられるようになりました。だからこそ、プロダクトの背景にはストーリーやイシュー(課題)は欠かせません。また、伝えるという観点ではイシューがプロダクトや創業者と合致しているかどうかも重要。創業者自身が一番の消費者であって、創業者とプロダクト、顧客が1本につながっているブランドは強いです」と述べる。

18年1月にスタートした「COHINA(コヒナ)」は、身長155cm以下の女性をターゲットにしたアパレルブランド。創業の経緯は、創業者の田中絢子と清水葵自身が小柄で似合う服を見つけるのに苦労していた背景がある。同じ悩みを持つ消費者にライブ配信などを通じて商品の魅力を伝え、販売する。まさに、デジタルを起点にして創業者とプロダクト、顧客が1本につながった好例だ。

D2Cにはブランドビジネスの未来がある

前編で紹介した「プロダクトファースト」と今回の「デジタル起点」。この2点から、D2Cという仕組みが示しているのは「これからのブランドビジネス」のあり方ではないだろうか。つまり、全てのブランドがD2Cブランドと同じ視点を持つべきだということ。今はトレンドチックに語られているが、10YCの下田も「この考え方はこれから“普通”になる」と話す。

もちろんスケールは容易ではなく、国内ではまだ100億円規模のD2Cブランドは誕生していない。しかし、海外ではすでにユニコーン企業も続々と誕生しており、今後の日本企業においても例外ではない。

新しいブランドビジネスの過渡期において、あらゆる企業がD2Cを表層的に利用して消費したり、競争材料にすることは本質的ではなく、長続きもしないだろう。D2Cの本来の意味を理解するとともに、すでに芽生え始めた小規模ブランドを中心にして、新たなブランドビジネスのスタンダードを醸成していくことが大切なのである。

文・写真=角田貴広

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