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Minimal(ミニマル)

アパレル業界を中心に、日本でもここ1年ほどで大きな注目を集めるようになったD2C(Direct to Consumer)というビジネスモデル。もともとはアメリカで2000年台後半に生まれた概念で、生産工程から販売までを一気通貫で行うことによって良質な商品を適正価格で届けるという仕組みに、ECやデータ活用などのテクノロジーを掛け合わせた、ブランド運営の新しい手法のひとつだ。

D2Cブランドの先駆けとも言われる2007年創業のメンズアパレル「Bonobos」が17年、Walmartによって3億1000万ドルで買収されたことからも、世界的なD2Cへの注目度がわかる。

しかし、ここ最近はEC専売ブランドであればなんでも「D2Cブランド」とうたわれるなど、言葉だけが一人歩きをしている。透明性を打ち出すアメリカのアパレルD2C「EVERLANE」といった先行事例もあるためか、「中間マージンを省くことで、いいものをより安く販売する」という仕組みばかりに注目が集まっている。

では、D2Cという新興勢力の本質はどこにあるのだろうか。国内ブランドに焦点をあてて、アパレルやアクセサリー、フード、ヘアケアなどの幅広いジャンルのD2Cブランドに話を聞く中で2つのキーワードが見えてきた。ひとつは「プロダクトファースト」だ。(後編は8月27日公開)

顧客と直接つながることのメリットは?

そもそもD2Cとは「ブランドの価値観や思想を媒介にして顧客と直接つながる」仕組みである。SNSやポップアップなどの販売タッチポイントでブランドの思いやストーリー、生産背景などを顧客に直接届けることができるし、ここで得られた顧客の声を商品企画に生かすこともできる。

D2Cといえば“EC専売”のイメージもあるが、オンラインでもオフラインでも、どこに資金を投じて、どのような顧客接点を作るのかは、ブランドによって異なる。商品開発や顧客接点として、必要であれば店舗だって構えることは多くのD2Cブランドが行っている。

アメリカでマットレスなどの寝具を販売する「Casper」は18年、自社製品を使って25ドルで45分間の仮眠をとれる「The Dreamery」という睡眠スポットをニューヨークにオープンした。ブランドが打ち出したいメッセージは体験するのが一番早いという思想から。

D2Cブランドは、こうした接点を通して消費者に訴えかけるためのストーリーを武器にしている。実際「EVERLANE」のように、創業者が何らかの課題感を感じてブランドを始めるケースは非常に多く、このストーリーや創業背景がブランドの独自性を確立している。

文=角田貴広

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