たった15分。1日の終わりの「雑談」が親子を変える

久山葉子氏


もし今、子どもにないがしろにされている感を抱いている方、今はそうではないけれど、将来が心配と考える方がいたら、ちょっと思い返してほしい。

子どもの目線でものを見ている? 子どもの気持ちを一番に考えている? 「仕事が忙しいから」「仕事で疲れているから」という理由で、実は自分が家族をないがしろにしていない? 

子どもとの時間を意識して持ち、まずは子どもが何を好きで何をやりたいと思っているか、を探ってみよう。そして、それに関する情報を蓄えておき、いざ子どもが必要と感じたときにすかさず与えられるように準備をしておくのだ。

「どんなことがあろうとも自分を受け入れてくれる人、話をきちんと聞いてくれる人、そんな存在であれば、子どもが何歳になろうとも嫌われることはないでしょう。いつまでも必要とされる存在であり続けると思います」と久山氏は言う。

「あとは、『自分自身の在り方を見せる』というのも大切なことではないでしょうか。私自身、お金のために働くというよりも、『楽しいことを仕事にして生きたい』という思いがあって、子どもにもそうあってほしいので、そういう姿を見せたいなと思っています。だから、たとえどんなに忙しくても楽しいからやっているのよ、と伝えることを忘れないようにしています」と久山さんは言う。

「私の働く姿が、『会社なんか行きたくない』と思いながら、お金のためにいやいや働いているのとは異なることをわかってもらえれば。そういう後ろ姿を見て育つと、娘が職業を選ぶ際になにか感じてくれるかなと思うのです」

そう考えると、何より大切なのは、子どもよりもまずは親の姿勢かもしれない。親が自分の気持ちに素直に生きているか。そして、その生き様をしっかり子に見せることが、子どもへの最良のメッセージとなるのではないだろうか。



仕上げとして重要なのは「子どもの好きなことを伸ばしてあげる」こと。「うちの場合には、小説をネットに投稿しているので、『こんなこと、ほかにやっている子はなかなかいないよ。どんどんやりなさい』と言って積極的に盛り上げています。外遊びもせず、ずっとパソコンの前に向かっていることも多いけれど、そこは大目に見ることにして(笑)」

娘が好きなことをして、将来的に収入がたいしたことなく質素な暮らしをせざるを得なかったとしても、本人が納得したうえでのことらならいいのだ。「ただし、親の務めとしては、将来収入が少ない職業に就けば、今家族でやっているのと同じように、年に何度も海外旅行に行くことは難しいのよ、といった経済的な現実は説明するようにはしています」その上でどういう職業を選ぶかは子ども次第。久山氏がそう思えるようになったのは、スウェーデンに来てからだという。

「日本にいたころは、親がレールを敷き、チャンスを与えてあげなければ、というプレッシャーがどこかにありました。子どものために親がすべてお膳立てして地固めをしてあげないと『ひどい親』だと思われてしまう、と思い込んでいたのです。でも、今は娘が選んだ道ならばそれでいい。嫌がっていることを無理にやらせる必要はないし、嫌いな道を無理に歩ませることもないと思っています」
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文=柴田恵理 編集=石井節子

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