「ボヘミアン・ラプソディ」の監督が描くエルトン・ジョンの半生

(c)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.


大きな翼を付けた目立つ舞台衣装で、更生施設の集会場に入ってくるエルトン(タロン・エガートン)。椅子に座ると、円座となった同じ境遇の入所者に向かって語り出す。ぼくはアルコール依存症で、薬物中毒で、セックスにも耽溺していた、と。

エルトンが集まった入所者の前で語り始めた話は、彼がレジナルド・ドワイトと呼ばれていた少年時代へと飛ぶ。歌と踊りのミュージカル的展開の幕が切って落とされ、彼が育った家へと映像は切り替わる。物語としては回想形式で彼の悔悟の半生が描かれていく。


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エルトンの育ったドワイト家は、夫婦仲が悪く、父親は家を空けることが多かった。父親は、たまにレジナルド少年と顔を合わせても、ハグすることもしない。一方、母親は近所の年下の男性と浮気しており、息子の成長にあまり関心を持ってない。

家の中で深い孤独を感じていたレジナルド少年だが、耳にした曲を1度聴いただけで、完璧にピアノで演奏できるという優れた音楽的才能を持っていた。少年は、唯一の理解者である祖母の助けで国立音楽院に入学する。

愛に飢えていた少年時代、エルトンはその渇望を満たすため、クラッシックからロックンロールに傾倒していく。この新たな音楽に目覚めるシーンも、ミュージカル仕立てで展開する。曲はもちろんエルトンの曲だ。このように彼の曲が、作中ではなかなか心憎い場面で挿入されていく。

音楽で身を立てようと、公募広告を見て、音楽出版社を訪ねるエルトン。曲はつくれるが、詞が難しいというエルトンが紹介されたのは、同じく応募してきた、詞を書く若者バーニー・トーピン(ジェイミー・ベル)だ。以後、数々の名曲を生み出すソングライターチームの誕生した瞬間だ。


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バーニーと組んだエルトンは次々とヒット曲を放ち、アメリカにも乗り込む。ロサンゼルスの「トルバドール」に出演したエルトンは、そこで、のちに彼のマネージャーとなり、「恋人」ともなる人物、ジョン・リード(リチャード・マッデン)に出会う。エルトンは、ジョンの出現で自らが同性愛者であることを自覚し、それが、彼が葛藤の人生へと踏み出す第一歩となるのだった。


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文=稲垣伸寿

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