香港「金融ハブの危機」鮮明、中国が英職員の拘束認める

(Chris McGrath/by Getty Images)

中国政府は8月21日、行方不明になっていた香港の英国総領事館職員のサイモン・チャンを拘束していることを認めた。チャンの2週間に及ぶ失踪に関し英国政府は20日、「重大な懸念を抱いている」と表明したが、その翌日に中国側は彼を治安管理処罰法違反の容疑で拘束中であると述べた。

中国の耿爽(Geng Shuang)副報道局長は記者会見で「この人物は治安管理処罰法違反により、15日間の拘留処分を受けている」と述べた。「はっきりさせておくが、彼は香港市民であり、英国の市民ではない。彼は中国人だ。つまり、この案件は中国の国内問題だ」と副報道局長は強調した。

チャンはスコットランドと中国間の貿易に関わる職務を行い、8月8日に深センを訪問し、翌日戻る予定だった。彼の消息が最後に確認されたのは、香港へ帰宅する電車内からの連絡で、家族から捜索願が出されていた。

中国の公安警察は容疑者の取り調べにあたり、15日間の拘禁拘束を行い調査及び尋問を実行できるという。中国当局の発表は、英国政府がチェンの失踪に重大な関心を寄せていると発表した翌日のことだった。

今回の事案の発生と並行し8月21日にロイターは、中国のEコマース大手「アリババ」が予定されていた香港での150億ドル規模の上場を、延期する予定であると報道した。事情に詳しい関係者2人によると、アリババは香港での政治的混乱の高まりを理由に、8月下旬に予定していた香港上場を、10月に延期する見通しだという。

アリババは2014年に当時、世界最大規模の上場をニューヨーク市場で実施した後、香港市場で2次上場を予定していた。

もう一つ、今回の事案の背景にあげられるのが、香港を代表する航空会社の「キャセイパシフィック」が中国政府の圧力を受け、香港のデモ活動に参加した社員を、解雇処分にした件だ。中国当局は、中国本土に向かうクルーのスマホ内のデータの精査を行っていると報じられた。

キャセイパシフィックCEOのルパート・ホッグは同社に対する批判や、中国側からのボイコットの動きを受けて8月16日に辞任を表明していた。

中国政府が今回、英国の香港領事館職員の拘束を認めたことで、アジアの金融のハブである香港の地位が揺らぐことが懸念される。3カ月近くに及ぶ、香港における反政府デモや政治的混乱は新たな局面に突入した。

キャセイパシフィックCEOの辞任に続き、アリババが香港市場における2次上場を延期したことで、中国政府と香港の民主化勢力の対立が及ぼす影響が、今まで以上に鮮明になってきた。

編集=上田裕資

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