ビジネス

2019.08.30

2018年ダウンロード数は世界一、アマゾンも恐れる格安売買アプリ

サンフランシスコの本社ビル、最上階の窓辺に座るWish創業者、ピーター・ゾルズースキー


「(品質管理が)いかに難しいか、過小評価していたよ。業者たちは実に面白いことをしてくれるんだ」

ゾルズースキーはそう言いながら眉を吊り上げる。例えばWishに70ドルのタブレット端末を出品したある業者。買い手は郵便でタブレットは間もなく到着すると書かれた「ほぼ英語」の手紙を受け取ったが、商品はついに来なかった。監視の目を逃れるため1000以上のアカウントを登録した業者もあった。良品を売ってよい評価を獲得し、その後商品を安物に切り替えてしまうといった手口もある。

ゾルズースキーはフェイスブックのコミュニティ・マネジャーだったコニー・チャンを雇った。チャンは約1万人のWishユーザーを組織し、いかがわしい業者の排除を手伝わせている。また、不正な業者に対処するため、週に800万点ほど(全商品の約3%)を抜き取り調査し、過去に悪い評価を受けた業者や、フェイクレビューを掲載した業者の商品もチェック。明らかなでっち上げの文章を自動的に見破れるようなソフトウェアも作った。

中国ではダニー・チャンが、150人の部下を率いて3カ所で事業を監視し、販売業者に出し抜かれまいと必死になっている。ルールや監視用ソフトも常に効果を発揮するわけではない。チャンは言う。

「彼らは間違いなく金儲けが第一だからね」

それでも、ゾルズースキーはもっとバラ色の将来像を描いている。Wishが顧客データを蓄積するにつれ、より多くのレビューが投稿され、ターゲティング用ソフトウェアの性能も向上する。そして最終的には商品の品質も上がるというのだ。ノーブランドのスマートフォンだって年々よいものになっていくさと、彼は言う。

「iPhoneがそうであるようにね」


ウィッシュ◎2011年、ピーター・ゾルズースキーがダニー・チャンと共同創業した格安ECサイト。スマートフォンからの買い物をターゲットとする。主に中国の安価な商品を販売。米国ではアマゾン、ウォルマートと並ぶショッピングアプリとなり、18年には世界で最もダウンロードされたショッピングアプリとなった。

ピーター・ゾルズースキー◎1981年、ポーランド、ワルシャワ生まれ。ソビエト連邦崩壊後、一家でカナダに移民。ウォータールー大学で数学やコンピュータサイエンスを学んだ後、2004年にグーグルに入社。07年の韓国オフィスでの勤務を経て、09年に退職した。11年にWishを創業。19年、フォーブスビリオネアランキング入り。

文=パーミー・オルソン 写真=ジャメル・トッピン 翻訳=町田敦夫

この記事は 「Forbes JAPAN 社会課題に挑む50の「切り札」」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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