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サンフランシスコの本社ビル、最上階の窓辺に座るWish創業者、ピーター・ゾルズースキー

米国のEコマース市場は、決してアマゾンの一人勝ちではない。

アマゾンに迫るそれはいわば“米国版タオバオ”、格安売買アプリ「ウィッシュ」だ。

2011年に創業し、今や米国だけでなく、世界へとその市場を広げつつある。


陽光あふれるサンフランシスコの午後、ピーター・ゾルズースキーがデータサイエンティストやエンジニアのいるフロア、ビリヤード台やDJブースが並んだフロアを通り過ぎ、摩天楼の最上階へと向かう。大きな窓からは息をのむような街の景観。しかし、ゾルズースキーの顧客の大半はこうしたオフィスとは無縁の、所得水準の低い地域で暮らす労働者階級だ。

アマゾン・プライムの年会費120ドル(約1万3000円)ですら高すぎると感じるような、ダラーショップ(1ドル均一店)の愛好者なのである。

「米国の41%の世帯は400ドル相当の流動資産ももっていない」と、ゾルズースキーは米連邦準備銀行の最新の推計を引き合いに出す。彼が創業した格安ショッピングサイト「Wish(ウィッシュ)」の顧客は、給料日直前になるとクレジットカードが利用できなくなるような層だ。彼は、中国の業者から直送されるノーブランド品ばかりをそろえ、まさに普通の人々のための電子商取引(EC)プラットフォームを作り上げたのだ。

「Wish」は2018年に世界で最もダウンロードされたショッピングアプリだ。今や米国第3位の売り上げを誇るECサイトで、世界中で約9000万人が月1回以上利用している。Wishは、売り上げの15%を受け取ることで18年、前年比の2倍に上る19億ドルの収益を記録。直近の資金調達ラウンドの時点で企業価値評価額は87億ドルを超え、18%を保有するゾルズースキーはビリオネアの仲間入りを果たした。彼は今後1〜2年以内のIPO(新規株式公開)を期待してもいいと話す。

顧客すべてのクリックを追うECアプリは、Wishが初めてではない。アマゾンはまさにこの種のデータを基盤に、年商2000億ドルの巨大サイトを築き上げた。

また、Wishはアリババ傘下のアリエクスプレスやアマゾンと競うように、外部業者が販売する中国製品を買い手に提供し続けている。しかしアマゾンが顧客をプライム会員につなぎ止めようと、動画ストリーミングや2時間配送などのサービスを次々と導入しているのとは違い、迅速な配送や商品の品質のことはさほど気にしていない。

Wishではセーターが2ドル(+送料2ドル)、アップル・ウォッチのニセモノが9ドル(同3ドル)、アンドロイドのスマートフォンが27ドル。時には商品が届くまでに数週間を要することもある。買い手はインスタグラムを眺めているときと同じように、商品の洪水に幻惑されて平均600〜700品目をスクロールし、初めてWishを利用した顧客の80%ほどがまた買い物をしに戻ってくる。

重量2kg以下の商品は安価なレートで運ぶという中国郵政と米国郵政公社の取り決めのおかげ(Wishでは約15%が該当)で、輸送費は安くすむ。今やサウスカロライナ州からニューヨークまでより、北京からニューヨークまで運ぶ方が安いのだ。

文=パーミー・オルソン 写真=ジャメル・トッピン 翻訳=町田敦夫

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