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2019.08.21

真の天才か? 本当にダメな人か? 職場で才能を見極める

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天才は壁に当たってほくそ笑む?


──なるほど。では続いて「広くて浅い反発」とはどのようなものでしょうか?

普通、人は「自分が経験してきたものの延長線上、そのちょっと先まで」しか理解できないんですよ。言い換えれば、人は基本的に「過去志向」。つまり自分が見たこと、経験したことが判断基準になっています。

実は、人がこれまで見たことがない新しいものに反対するのは「自分の過去を否定されたような気分になるから」なんです。

例えば、自動車が出現した時、主な移動手段が馬だった人たちは大いに反対しましたが、それは「ずっと馬で移動し、経験や思い出を築いてきた自分」が否定された気になってしまうからなのです。

しかし、何かのきっかけで(例えば自動車が)普及すると人々の意識はオセロのように一変し誰もが賛成派に回ります。

なぜなら、「元々理解できなかった未来だった物」が普及し、社会に受け入れられたときにはすでに「未来だった物は過去の当たり前の物」になっているからです。

つまり、「広くて浅い反発」はイノベーションの条件であり、天才が日常的にぶつかる壁なのです。

才能とは?

──北野さんにとっての「才能の定義」を教えてください。

僕にとっての才能の唯一の定義は、「人がお金や労力を払ってでも求めるものを作れるかどうか?」です。

これは、「読まれる文章」と「売れる文章」の違い、を見るとよくわかります。両者の違いはものすごく大きい。

「読まれる文章」の典型はWEBなどの恋愛の文章です。ひと昔前はブームになりましたが、今となってはWEBで少しバズることがあったとしても、書籍になった時に売れるものはごくわずかでしょう。つまりただの娯楽なのです。

対して「売れる文章」とは、今まで読んだものとは違うもの、人々の価値感を広げるもの、本質的な気づきをもたらしてくれるもの、そして今まで出来なかったことを出来るように背中を押してくれるものです。

このように「お金を払ってでも読みたいもの」を生み出せるかどうかが、才能だと思います。そしてこれは「頭がいいこと」とは少し違うものです。

文章ではありませんが、僕はAirbnbのサービスはイノベーションの典型だと思っています。

このサービスは「我々はわざわざ時間とお金を割いてホテルに泊まりたいのではなく、その地域の文化や風土を知るために旅行しているのだ」という本質的な気づきをもたらしてくれました。改めて見ると、売れる文章との共通点が多いですね。

──なるほど。このことを知っていれば、組織は「本当に才能がある人」に投資することができるかもしれません。

組織運営に限らず、個人としても「自分の進むべき道」を見出す一助になれば嬉しいですね。

文=松浦朋希

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