UPSは、スタートアップに投資するVC子会社「UPS Ventures」を傘下にもつ。シリコンバレーに本拠を置く同社は、1997年に「UPS Strategic Enterprise Fund」として設立され、最近名称を変更した。TuSimpleへの出資は、新名称での初めての案件となる。
「今回のような革新的な技術の場合、我々は社内の事業部門と緊密に連携しており、数ヶ月前に彼らとテストを開始した」とUPS Venturesでマネージングパートナーを務めるTodd Lewisは話す。
TuSimpleのチーフ・プロダクト・オフィサー、Chuck Priceによると、同社は5月にUSPS(アメリカ合衆国郵便公社)とフェニックスーダラス間で貨物輸送のテストを行っているが、UPSとはその数ヶ月前からツーソンとフェニックス間で商用の貨物輸送を実施してきた。TuSimpleとUPSは、いずれもその事実を公表しておらず、Priceは契約条件についても明らかにしなかった。
非上場企業であるTuSimpleは、アリゾナ州内にトラック50台を保有し、同州のツーソンにエンジニアリング拠点を構えている。現在は、全てのトラックに2名の技術者を同乗させて走行しているが、2年以内に完全自動運転化を目指している。
長距離トラックは自動運転に最適
ウェイモは、ロボットタクシーサービスをフェニックス郊外で展開しており、GM傘下のクルーズやウーバー、リフトは自動運転車によるオンデマンド配車サービスを目指している。しかし、都市部での展開は厄介であり、実現には当初の想定より時間を要しそうだ。
一方、自動運転トラックはより単純な高速道路を走行することが多く、いち早く商用化を実現しそうだ。特に長距離輸送はドライバー不足が問題化しており、自動運転化の早期実現が期待されている。
TuSimpleによると、長距離輸送の自動化によって運転が効率化され、人件費以外にも燃料費がカットできるほか、タイヤやブレーキなど部品の摩耗を防ぐことができ、コストを最大30%削減することが可能だという。
Priceによると、昨年UPSがTuSimpleと提携した際、あるUPS幹部は自動運転技術の開発には少なくとも15年を要すると考えており、現状は実現に程遠いレベルだと考えていたという。しかし、その幹部はTuSimpleの車両を体験し、開発計画を聞くと考えが変わり、「これまでは懐疑的だったが、今は信奉者になった」と述べたという。
TuSimpleは、これまでにエヌビディアや中国のテック大手「新浪」、香港のComposite Capital、英国のベンチャーキャピタルのZP Capitalなどから資金を調達している。